無機質(ミネラル)

無機質(ミネラル)

無機質(ミネラル)
ミネラルは、炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質、ビタミンとともに5大栄養素といわれ、人にとって欠かすことのできない栄養素です。
ミネラルは、無機質とも言われ、ビタミンと同様の働きをする事が知られていますが、ミネラルは体を構成する成分でもあります。
このためミネラルは、ビタミンとともに体には重要な栄養素となっています。

亜鉛

・特徴と働き:
亜鉛は、骨や脾臓など人の体内に平均約2gあるとされ、ミネラルのなかで鉄に次ぐ量となっています。
亜鉛の役割は、人の体内で行われている代謝に必要な酵素を作ったり、維持するのに重要な役割を担っています。
亜鉛が関与する酵素の数は100種類を超えるといわれ、その主な役割は、免疫に関するものや遺伝子情報の入ったDNAのコピー、細胞の分裂などに欠かせないものとなっています。
細胞が生まれ変わりの多い箇所では欠かせない存在ですが、なかでも舌にある味を感じる味蕾(みらい)と言われるところに関係が深いとされています。
そのため亜鉛の欠乏は、味覚障害が起こることがわかっています。そのほか精子の減少、免疫力の低下、甲状腺機能の低下などが言われています。
一方、亜鉛の過剰摂取は、余った亜鉛は対外に排出されるため起こりにくいとされていますが、一度に大量に摂取すると、鉄や銅の吸収が阻害されることによる貧血が考えられ、そのほかHDLコレステロールの濃度が低下すると言われています。

・亜鉛を多く含む食品
亜鉛を多く含む食品、牡蠣やレバー、うなぎ、肉類や海藻類などです。

カリウム

・特徴と働き:
カリウムは人にとって不可欠なミネラルで、おもに細胞内の液体、細胞内液に多く、その主成分となっています。
カリウムの役割は、細胞の外にある液体、細胞外液に多いナトリウムとバランス(1対1が理想とされる)を保ちながら細胞を動かしています。
カリウムとナトリウムが細胞内を行き来することで電気信号がおこり、これにより脳の情報伝達や心臓の伸縮運動などが行われています。そのほかカリウムは、血圧の調整にもかかわっています。
カリウムは、高血圧や脳卒中など生活習慣病の予防に良いとされています。
また、過剰に摂取しても腎機能により体外に排泄されるので過剰症の心配はありませんが、腎機能の病気がある人は注意が必要です。

・カリウムを多く含む食品
カリウムを多く含む食品は、バナナやトマト、ジャガイモ、豆腐、果物類、野菜類、イモ類、豆類などです。

カルシウム

・特徴と働き:
カルシウムは、骨や歯を構成する主要な栄養素です。その量は体重の約1%~2%といわれています。
体内のカルシウムのうち99%が骨に存在し、残りの1%は血液や細胞の周りなどに存在しています。
実はもっとも大切なのは、骨のカルシウムよりも残り1%のカルシウムが、体にとって重要な役割を果たしています。
人の体は、血液中のカルシウム濃度を一定に保つようになっていて、血液中のカルシウム濃度が下がると、酵素とビタミンDの働きにより骨を破壊して、血液中のカルシウムを補います。
逆に血液中のカルシウムに余裕ができると、酵素とビタミンDの働きにより骨を補修します。そのため骨は、体を支えるほかにカルシウムの貯蔵庫としての役割を担っています。
カルシウムは、脳の活動や心臓の筋肉の収縮にもかかわりが深く、細胞間の信号のやり取りにも重要な役割を担っています。
骨の破壊には約20日間かかるといわれていますが、骨の再生には約90日かかるといわれていますので、長期間のカルシウム不足が続くと、骨の再生が間に合わず骨折しやすくなったり、それが更に進むと骨粗しょう症のリスクを高めるとされています。
カルシウムの摂りすぎは通常の食生活のなかでは起こりにくいですが、過剰になると結石ができ易くなるほか、他のミネラルの吸収を阻害するといわれています。
カルシウムの摂取は、マグネシウムとリンとのバランスが大事です。その比率は、カルシウム2に対しリン2、マグネシウム1が理想とされています。そしてビタミンDと共に摂ることで腸から吸収効率がよくなり、骨の再生力が高まる、筋にへの作用がよくなるなどカルシウムの働きを補助してくれます。

・カルシウムを多く含む食品
カルシウムを多く含む食品は、牛乳、小魚、海藻類、緑黄色野菜など。

クロム

・特徴と働き:
クロムは、脂質と糖代謝に関与する栄養素で、インスリンが血液中のブドウ糖を取り込む作用を促進することが分かっています。
このほか血液中の中性脂肪やコレステロールのコントロールを助けると考えられています。
そのためクロムの欠乏は、インスリンの代謝異常や血糖値が高くなる、血中コレステロールなどのバランスが悪くなる、末梢神経障害、糖尿病、動脈硬化などのリスクが増えます。
クロムの過剰摂取は、通常の食生活では考えられませんが、1度に過剰摂取すると腎不全や肝機能障害のリスクがあるとされている。

・クロムを多く含む食品
クロムを多く含む食品は、ひじき、わかめ、あなご、あさり、レバー、チーズ、そば、アーモンド、ピーナッツなどに含まれています。米や小麦などの穀類にも含まれますが、精製することで含まれるクロムのうち92~98%が失われるといわれています。

セレン(セレニウム)

・特徴と働き:
セレン(セレニウム)は、酸化に関するたんぱく質と共に酵素として、細胞のDNAを壊し癌化させる恐れのある活性酸素やフリーラジカルを抑制する抗酸化作用があるといわれ、ビタミンEやビタミンCと共に細胞を酸化から守っています。
セレン(セレニウム)の血中濃度が高い人は、ガンになりにくいとの報告もあるようです。
そのほか甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンを活性化させるといわれセレンは重要なミネラルの1つです。
セレン(セレニウム)の欠乏は、通常の食生活では起こりにくいとされていますが、欠乏すると貧血やうっ血性心不全、前立腺ガンなどのリスクが高まることが知られている。
セレンの過剰症は、吐き気、下痢、免疫の低下、HDLコレステロールの低下、皮膚ガンなどのリスクが高まるとされています。

・セレン(セレニウム)を多く含む食品
セレン(セレニウム)を多く含む食品は、牡蠣やいわし、ホタテ、玄米、魚介類に多い。

・特徴と働き:
鉄は、そのほとんどが血液中の赤血球で酸素を全身に配送する役割を担っているヘモグロビン成分で、体の中の鉄の70%がこれに充てられている。そのほかの鉄は、肝臓、骨髄、脾臓などに貯蔵されている。
鉄を摂取しても、腸から吸収される量は微量なため、体が必要とする鉄の需要に対応するために、古くなった赤血球は壊され利用可能な鉄を取り出し再利用されている。その量は1日に必要な量の97%といわれ、残りを腸から吸収された鉄が利用されている。
鉄が欠乏すると、赤血球を作ることができなくなり鉄欠乏性の貧血を起こすことが知られています。体の酸素不足による頭痛や心臓への負担が大きくなります。
通常の食生活のなかで鉄の過剰摂取は起こりにくいですが、鉄を過剰に摂取した場合、吐き気や下痢、腸を傷つける、鉄が体内に蓄積し鉄過剰疾患になるリスクが高くなります。

・鉄を多く含む食品
鉄を多く含む食品は、レバーやほうれん草などの緑黄色野菜、ひじきなど海藻類、魚介類など多くの食品に含まれています。
ちなみに鉄には、動物性食品に多く吸収効率のいいヘム鉄と、植物性食品に多く、ヘム鉄に比べ吸収効率は低いですが、ビタミンCとたんぱく質と共に摂ることで吸収率が上がる非ヘム鉄があります。

・特徴と働き:
銅は、調理器具などに使われ身近な金属の1つですが、人の体にとっても欠かすことのできないミネラルとして働いています。
銅はおもに骨や肝臓に存在し、赤血球のヘモグロビンを作るのに必要な鉄の補助的役割を担っています。
銅自体に抗菌作用のあることが知られ、抗菌の靴下などに使われていますが、体内でも抗酸化作用する酵素を構成する中心的存在であり、活性酸素やフリーラジカルを除去することが知られています。
このほか銅は、骨の形成にも関与していて、その役割はとても重要なものとなっています。
通常の食生活で銅が欠乏を起こすことは考えられませんが、欠乏した場合、赤血球に欠かせない鉄を全身に送ることができなくなることによる銅欠乏性貧血や骨の異常が起こることがわかっています。
銅の過剰症ですが、余分に取られた銅は肝臓の機能によって体外へ排泄されることから過剰症は起こらないとされていますが、銅のみを大量摂取した場合に肝硬変などの肝臓の障害が起こることが知られています。

・銅を多く含む食品
銅を多く含む食品は、レバーやナッツ、牡蠣などの魚介類

ナトリウム

・特徴と働き:
ナトリウムは食塩の主な成分で、おもに血液中と細胞の外にある体液にあり、細胞の体液の水分バランスを極狭い範囲内に収めるために必要とされています。
ナトリウムは、細胞内の体液に含まれるカリウムと共に電気信号を発生させることが知られ、これにより神経や心筋など筋肉を動かすことが出ます。そのためナトリウムは欠かすことのできないミネラルの1つとなっています。
ナトリウムはカリウムとのバランスが大事で、1対1が理想とされていますがナトリウムが多すぎる場合、ナトリウムのみを排泄する機能がないためにカリウムも共に排出されてしまいバランスをとることが難しくなります。
ナトリウムは、汗や尿によって体外に排泄されますが、尿の排泄によってその濃度を調整しています。
ナトリウムは、その血液の水分量に密接に関係していて、ナトリウム濃度が薄くなると血液量は減り、濃度が濃くなると血液量が増えます。
ナトリウムは、摂り過ぎの傾向があり少量で要求を満たせるため欠乏しにくいミネラルですが、欠乏すると血圧の低下や心拍数の増加、ふらつきなどが起こり、ひどい場合には低ナトリウム血症が知られています。
ナトリウムが過剰になると高血圧や余分な体液器が増えることで足首や足のむくみが生じ、脳卒中や心臓病、腎臓病などの生活習慣病のリスクがたまります。ひどくなると高ナトリウム血症が知られています。

・ナトリウムを多く含む食品
ナトリウムを多く含む食品は、干物やたらこ、塩辛、漬物など加工食品やインスタント食品、菓子類

マグネシウム

・特徴と働き:
マグネシウムのほとんどが骨(60%)と筋肉(30%)に存在しています。カルシウムとリンと共に骨や歯を作るためには欠かせないミネラルの1つです。
マグネシウムは、神経の興奮を抑えたり、エネルギー代謝にも関係が深く筋肉や心臓を正常に機能する手助けも担っています。
マグネシウムはカルシウムとのバランスを取っていて、体内のカルシウム濃度をコントロールしていることが知られ、このバランスが崩れるとイライラするなど精神が不安定になるとされています。
またストレスやアルコール摂取で尿中のマグネシウム濃度が増えることが知られています。
通常の食生活でマグネシウムの欠乏は起こりませんが、欠乏すると不整脈や筋力の低下、精神が不安定になるとされ、長期にわたると骨粗しょう症や心疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まるとされています。
マグネシウムの過剰症は通常は起こらないとされ、間違って大量に取った場合は、下痢や心臓への負担、高マグネシウム血症が起こるとされています。

・マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムを多く含む食品は、アーモンドやピーナッツ、ごま、ひじき、海藻類、野菜類、豆類など。

マンガン

・特徴と働き:
マンガンは体のいたるところに見られる、ミネラルでその量は約12mgと極微量です。
しかしマンガンの働きは、とても重要で様々な酵素を活性化することで、脂肪の代謝に必要な酵素や糖代謝、骨の形成、抗酸化作用に関する酵素などの新陳代謝を促進します。
生殖や成長ホルモン、血糖値をコントロールするインスリンなどの生成を助けています。
通常の食生活でマンガンの欠乏は起こりませんが、欠乏すると脱力感、生殖能力の低下、血糖値の異常、骨や軟骨の異常、成長異常、糖尿病などのリスクが増加する。
マンガンの過剰症ですが、通常は起こることはありませんが中毒になるほどの量が体内に入った場合、パーキンソン氏病のような神経症などになるといわれています。

・マンガンを多く含む食品
マンガンを多く含む食品は、幅広い食品に存在し、玄米などの精製していない穀類やアーモンドなどの豆類、のりなどの海藻類など植物性食品に多い。

モリブデン

・特徴と働き:
モリブデンは、おもに肝臓や腎臓、骨に存在します。
モリブデンの役割は、単独で働くよりも酵素の成分として働いています。
体にとって不要な物質を尿酸に変える、アルコールの代謝などの酵素や炭水化物(糖質)や脂質の代謝を助ける、血液を作る鉄の働きを助ける、銅の排泄を増やすなど様々な働きをしています。
モリブデンは、普通の食生活をしていれば欠乏症の心配はありませんが、不足した場合は貧血、疲労、尿酸代謝障害などのリスクが高まります。
モリブデンの過剰症もほとんど起こりませんが、大量に摂取した場合は、銅の排泄が促進され銅欠乏性貧血や動脈硬化などのリスクが高くなり、尿酸値が高くなる、通風などがあります。

・モリブデンを多く含む食品
モリブデンを多く含む主な食品は、牛レバー、牛乳、チーズ、ヨーグルト、ヒジキ、納豆、大豆、そば、玄米などで、レバー・豆類など。

ヨウ素

○ヨウ素
・特徴と働き:
ヨウ素は、そのほとんどが甲状腺に存在し、成長と発達、新陳代謝に必要な甲状腺ホルモンの生合成に欠かせないことから、人にとって欠かすことのできないミネラルの1つです。
甲状腺ホルモンは、全身での蛋白合成を増加させ、肝臓、腎臓、心臓、骨格筋などの酸素消費を増加させる働きがあるとされています。
ヨウ素の欠乏は、通常の食生活では起きることはないとされていますが、欠乏すると甲状腺肥大や甲状線腫、肌の乾燥やひび割れ、髪の毛の痛みや細り、精神異常、体重増加につながるとされ、胎児や幼児はもっと深刻で脳や成長の異常のリスクが高まるとされています。
ヨウ素の過剰症は、欠乏のときと同じような症状で甲状腺肥大や甲状線腫のリスクが高くなりますが、通常の生活のなかでは起こらないとされています。

・ヨウ素を多く含む食品
ヨウ素を多く含む食品は、昆布やわかめ、ひじきなど海藻類や魚介類など。

リン

・特徴と働き:
リンはカルシウムの次に多いミネラルで、そのほとんどがリン酸塩の形で骨に存在し、残りは細胞内に存在します。
リンはカルシウムとマグネシウムと共に骨や歯を作っています。このとき大切なのがリン、カルシウム、マグネシウムのバランスで、2対2対1が理想とされ、特にリンとカルシウムのバランスが大切で、リンがカルシウムより多くなると、バランスを取るために骨からカルシウムが、溶け出すことが知られています。
このほかリンは、エネルギー代謝や神経伝達物質の生成にも関わり、遺伝子やDNAなどのとても重要な物質を作るのに必要とされています。
リンの欠乏は通常の食生活では起こりませんが、欠乏すると骨や歯がもろくなり、長期間続くと骨なんか症のリスクが増えます。
リンの過剰症はとても起こりやすくなっています。それはインスタント食品や加工食品、清涼飲料、お菓子などに添加物として含まれているため過剰になりやすくなっています。過剰摂取は欠乏と同じようなリスクが生じます。

・リンを多く含む食品
リンを多く含む食品は、大豆や牛乳、魚類、肉類など動物性食品に多い。


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