汚染の大地に生きる (中)
ベラルーシには、フェイシェルという制度がある。日本の保健師に近い専門職で、さらに投薬することができる。アメリカのナース・プラクティショナーにもちょっと似ている。医師不足を解決するための方法として、日本でも導入の検討が始まっている。
そのフェイシェルの往診に、同行した。マトリョーシカのように丸い体の、頼もしい感じの中年女性である。
カザフスタンから来た人の家を訪ねた。わざわざ放射能に汚染した地域に来るなんて、怖くないのだろうか。
「セミパラチンスクではたくさんの核実験が行われ、ここ以上の放射能があった。ここにはまだ仕事がある」
なんともやりきれない言葉だった。
約20年前から、小児がんの子どもたちの医療支援活動をしてきた日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)。今回、代表のぼくと神谷事務長にベトカ市長から感謝状をいただいた
その後に訪ねたアレクセイさんは、ウズベキスタンから来た。事故の翌年、チェルノブイリの汚染除去作業にかかわったという。ポンプの修理など、1日7時間働いた。そのため、健康に影響が出て、チェルノブイリの障害認定を受けている。
その後、ベトカで労働者を探していると聞いてやってきた。あたたかく迎えられた。当時、人口が減っていたベトカでは、コルホーズを守るために労働者が必要だった。
63歳になった現在は、動脈硬化で足の血管が閉塞し、心房細動と狭心症がある。冠動脈のバイパス手術の順番待ちだという。
「ウズベキスタンに帰りたいけど、もう、帰る力はない。自分の人生はチェルノブイリで狂ってしまった」
- プロフィール
- 鎌田實 かまたみのる
- 誕生日:1948年6月28日
- 諏訪中央病院名誉院長
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