サヘルとフローラ ・前編 (上)
戦場の瓦礫のなかから助け出された3歳の女の子サヘル・ローズは、「お母さんのために生きる」と決めたときから、人生が変わった
1989年2月下旬、クルド自治区にほど近いイランの村が、イラクの大規模な空爆を受けた。人口400人の村は一瞬で壊滅した。
レスキュー隊が生存者を探したが、だれ一人生きていない。4日後、救援ボランティアの女子大生が、瓦礫のなかから小さな手が出ているのを見つけた。人形の手だと思って触ったら、人の手だった。かすかに脈も感じた。
その小さな手の持ち主こそ、3歳のサヘルだった。そう、日本でタレント活動をしているサヘル・ローズのことだ。
ぼくはイラクの白血病の子どもを救うNPOの一員として、何度もイラクを訪ねている。昨年夏には、北イラクのアルビルに拠点を作った。日本人の看護師とNPOスタッフが常駐し、日本人の医師が何度も行き来しながら、現地の病院スタッフに感染症対策の技術を教え込んでいる。成果が現れはじめ、バグダッドやバスラの病院からも、研修を受けたいと要請されている。
砂漠のイメージの強いイラクだが、イラン国境に近い一帯は、川が流れ、緑があり、山の美しい地域だった。イラク側のクルド自治区から見て、山の向こうはイラン。きっとサヘルが生まれた村は、その辺りにあったのだろう。
長身のペルシア美人で、流暢な日本語を話すギャップが印象的。どんな人なのだろうとずっと興味をもっていた。「鎌田實 いのちの対話」のゲストに来ていただいた。
- プロフィール
- 鎌田實 かまたみのる
- 誕生日:1948年6月28日
- 諏訪中央病院名誉院長
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