裏社会からの人生逆転劇 ・ 後編 (下)
加藤秀視さんは、「人間は変われる」ことを自ら示し、道を踏み外した若者たちの更生と自立を支援している
それから4年間、加藤さんは父親の面倒を見た。病院に足を運びながらも、まだ父親を完全に「許した」というわけではなかった。
今年3月、父親は亡くなった。58歳の誕生日が目前だった。最後に、棺桶に入った父親の顔を触った。皮膚の感じが、自分とよく似ていると思った。
「ああ、つながっているんだなあ」
このとき、はじめてすべてを了解できた。父親がいなかったら、自分はいなかったし、自分の子どももいなかった。理屈を超えて、命がつながっているという事実を、受け入れざるを得なかった。
「お疲れさん、おれと弟の命の種を育ててくれてありがとう」
彼は、心からそう声をかけた。はじめて、父親を許すことができた。そして、彼は父親を憎んできた自分自身を許すことができた。4年間の介護は、そのために必要な時間だった。
「ぼくは、本当にバカな人生を送ってきました。でも、こんなぼくでも、人の役に立つようなことが少しはあるはずなんです」
どんな命にも意味がある。それを信じることができれば、人は変われる。
いま、加藤さんは、社会から足を踏み外そうとする若者や、生きる希望を見出せない人たちを引き受け、立ち直らせようとしている。
「人はいつでも、どこからでも変われる」
彼は、何度も繰り返し言う。何より、加藤秀視という生き方そのものが、それを雄弁に物語っている。
- プロフィール
- 鎌田實 かまたみのる
- 誕生日:1948年6月28日
- 諏訪中央病院名誉院長
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