言葉が届くと、行動が変わる (上)
地域を健康にするために、住民の生活習慣をどう変えたらよいか、ずっと考えてきた。どんなに健康によいことでも、患者さんが実行してくれなければ何も始まらない。患者さんに、いかに「行動変容」を起こさせるかが地域医療のカギとなる。
広告の世界でも、「行動変容」という言葉が使われていることを知った。たしかに、その商品を買うという行動を起こさせたり、その商品で生活を変えさせたりしている。
広告業界のトップクリエイター、山本高史さんと対談する機会があった。電通でコピーライターとして活躍し、その後、独立した。JR東日本の「私はSuicaと暮らしています」や、トヨタ自動車の「変われるって、ドキドキ」など話題の広告をつくっている。小泉さん時代の自民党の広告も、山本さんが手がけたそうだ。小泉元首相の「変人」のCMを覚えている人も多いだろう。
山本さんは、広告という手法で、世の中に刺激を与えていく。いわば「伝えるプロ」は、言葉についてどう思っているのだろうか。
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「言葉には人を動かす力があるのに、多く人が言葉の力を信じていないのではないでしょうか」
彼はまず、そう切り出した。たとえば、政治家なんかは言葉を使う職業のはずなのに、適切な言葉を使っていない。それどころか失言を繰り返す。そのうちに言葉が空疎化していく。受け手側も麻痺する。言葉の重みがどんどん失われていく。
政治家だけではない。医療の現場でもそうだ。医師や看護師が言葉をおろそかにしはじめたことで、患者の心は傷ついている。日本では、医療技術は高いのに、肝心の患者の満足度は低い。優れた技術に、あたたかな言葉が加われば、もっと国民の満足度が上がるのになと思った。
山本さんも、言葉が粗末に扱われている現状を憂いていた。(次回に続く)
- プロフィール
- 鎌田實 かまたみのる
- 誕生日:1948年6月28日
- 諏訪中央病院名誉院長
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