2010年7月20日 -- 心の病 --

滝行体験…痛さ・冷たさ、悩み打破

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 滝の水を浴びる滝行(たきぎょう)が 一般にも広がっています。山中であえて冷たい水を浴びることに、どんな効用があるの? 滝行を体験し、考えてみました。(渡辺理雄)

 「癒やされたくて来ました。気持ちよかった」

 千葉県浦安市の会社員女性(25)が、屈託ない笑顔を見せた。東京都青梅市の武蔵御嶽(みたけ)神社近くの「綾広(あやひろ)の滝」での滝行体験。同じ会社の男性(32)を誘い、カップルでの参加だ。

 この滝行、数年前に手軽な「プチ修行」の一つとしてマスコミで紹介され、体験する会社員らが増えた。指導する寺・神社や宿坊(参拝者向けの宿)は、国内に少なくとも20か所はある。冒頭の女性が参加した宿坊「静山荘」の滝行体験では昨年、約1000人が滝に打たれた。

 指導した同神社神職の橋本薫明(よしあき)さん(57)によると、参加者は20~40歳代女性の割合が高い。

 「占いや神秘的な力があるとされるパワースポットなど、スピリチュアル(霊的)なものへの興味の延長で、滝行にひかれる人が多いようだ」と話す。

 浜松医大名誉教授(脳生理学)の高田明和さんによると、あれこれ考えるのをやめ、自分の体に意識を集中すると、不安や痛みをつかさどる脳の「帯状回(たいじょうかい)」の機能が低下する。

 「座禅で呼吸に集中するのは難しいが、滝が体を打つ痛さや冷たさなど強い刺激には意識を集中しやすく、悩みから解放される効果が高いのでは」と言う。

 新潟青陵大学教授(社会心理学)の碓井真史(うすいまふみ)さ んは「冷たい水に打たれるのは、身体的にも精神的にも大きなストレス。その分、後の解放感や爽快(そうかい)感も大きい。また、自分の意思で厳しい滝行を行ったことにも達成感を感じるのでは」と説明する。

 米の学術雑誌「サイエンス」では最近、手洗いをした人は、しなかった人より、「自分の選択は正しかったのか」という迷いが少ない、という心理実験の結果が掲載された。「洗い流す」という意味では、滝行にも同じ効果があるのかもしれない。

 ただし、滝に勝手に入るのは危険。指導者がいる場所で行うようにしたい。体調が良くない時には無理は禁物だ。

滝行
 古来の宗教である修験道などで行う修行の一つ。神仏に祈願したり、本格的な修行に入ったりする前などに、身心の汚れを払うために行われている。

水温14度の「修行」

「綾広の滝」に打たれる記者。予想以上の衝撃に必死で耐えたが……(6日、東京都青梅市で)=和田康司撮影

 7月6日、綾広の滝。記者も滝行に挑戦した。

 冷たそうで帰りたくなったが、白いふんどし、はちまき姿に着替えた。準備運動の後、橋本薫明さんから「滝に打たれるのは3回。1回目は外のけがれ、2回目は内のけがれ、最後に水と一体 になるイメージで」との説明。覚悟を決めた。

 滝の高さは約8メートル。教えられた通り、「エイ!」と声を上げ、水が落ちてくる岩に背中を付けた。

 1、2回目は10秒。3回目は20秒。水温は14度で、冷たい。うまく息ができない。滝から離れた途端、ひどい頭痛に襲われた。冷たさに耐えるため首と肩を縮めていたのが、良くなかったらしい。

 「頭が痛くなる人もたまにいる」と橋本さん。記者にとって、滝行は紛れもなく「修行」だったが、下界でどうしても忘れたい、つらい出来事があったら、また来ようと思った。

2010年7月15日 読売新聞)

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