一言が人生を変えた (下)
現在、大谷さんは、全国骨髄バンク推進連絡協議会の会長として、骨髄バンク普及のための活動を続け ている。
患者さんの相談に乗ることも多い。「苦しいでしょう。でも、絶対にあきらめないでください。絶望の淵から立ち上がった人もいますよ」とやさしく語りかける。厳しい現実から目をそらそうとする人には、あきらめてほしくなくて、喝を入れることもある。
彼女の言葉は、強くて、あたたかい。だれより、悲しみや苦しみを体験した彼女だからこそ、ほかの患者さんや家族の心に響く。
「私は、ある人の言葉が忘れられません。『あなたがたいへんな病気を体験して、でもそこから元気になったことは、強みでもあるけれど弱みでもあるということを忘れないでください』という言葉です。弱みって何ですか?と聞くと、『あなたはできたけれど、できない方もいらっしゃる。そのことは、絶対に忘れないで』と言われました。私は、その言葉を肝に銘じて、活動しています」
現在、骨髄バンクには36万人以上が登録し、約2500人の患者さんが移植を待っている。これまで1万人以上の人が骨髄移植を受けることができた。この数字は単なる数字ではない。見ず知らずのだれかのために、骨髄を提供する善意の人が、これだけいるのだ。そして、その善意によって、多くの命が救われている。
骨髄移植を受けた日を、「第2の誕生日」という。文字通り、新しい命がスタートした日だ。もし、あの言葉がなかったから、大谷さんは、第2の誕生日を迎えられなかった。
「1%もあるやん」
この言葉が放たれた瞬間、生き抜くことを決めた。一言が、人を一瞬で変えたのだ。
- プロフィール
- 鎌田實 かまたみのる
- 誕生日:1948年6月28日
- 諏訪中央病院名誉院長
詳しいプロフィールはこち ら


