2010年6月23日 -- 心の病 --

平和への夢を正夢に

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南太平洋ポリネシアでの核実験をテーマにしたシンポジウムに、先住民の代表らとともに参加した筆者(右端、昨年3月・ピースボートの船上で)

パレスチナを思う

 ぼくが仕掛けた夢が壊れそうだ。世界中にいくつもの戦争の火種がある。そのうちの大きな一つがパレスチナ問題。イスラエルとパレスチナの間を平和にできないだろうかとずっと考えてきた。

 5月の末、パレスチナ自治区ガザに向かっていたトルコのパレスチナ支援船がイスラエル軍に拿捕(だほ)され、9人の人権活動家が殺された。ぼくの夢が危なくなった。

 2005年パレスチナ自治区のヨルダン川西岸北部にあるジェニンでアフメド君(12)が撃たれた。アフメド君はおもちゃの銃を持って遊んでいただけ。脳死になった。イスラエルの子どもを救うために心臓や腎臓を与えてくれないかと頼まれた。父親のイスマイルさんは、迷った。迷いながら息子の命を与えることで、これ以上子どもが殺されないようになるかもしれないと切ない希望をもった。平和のメッセージを世界に伝えたいと、息子の臓器を提供した。6人に移植された。手術は成功した。5人は元気に生きているという。

 ぼくはこの事実がずっと気になっていた。2008年8月、スイスに講演を頼まれて行った。講演のあと夢の実現の協力をお願いした。

 いまだにパレスチナに平和が来ない。子どもをイスラエル兵に撃たれたのに、子どもの臓器をイスラエルの子どもたちに与え、命をつないだお父さんは今どう思っているだろう。悲しいのではないだろうか。悔しいのではないだろうか。この事実を世界はみんな忘れている。この臓器をあげた子のお父さんと、臓器をもらった子の親がパレスチナの平和について話せないだろうか。いつかこのことを絵本にしたい。日本語やアラビア語、ヘブライ語で絵本を出版してみたい。国連の仕事をしてきた人たちが探してくれた。関係者がみつかった。

 ぼくは8月、ピースボートに乗る。28年目を迎えた第70回の記念クルーズは約1000人で、80日間で19寄港地、17か国を回る。若い人からお年寄りまでいろんな人が乗り込む。今回は世界一周禁煙プログラムも行われる。学校に行けない子どもたちや引きこもりの若者たちを対象にしたグローバルスクールを洋上で展開する。

 8月末のエジプトから地中海を回って北アフリカへ向かう2週間ほど、ぼくはピースボートに乗って洋上で講演をする。夢の実現のために交渉してきた。同じ期間に、子どもの臓器をあげたお父さんイスマイルさんは乗ってもいいと承諾してくれた。臓器をもらったイスラエル側の子ども1人とその両親とも前向きに話が進んでいる。一緒の船に乗りながら、平和について語り合い、お互いに理解しあうことができないだろうかなと考えている。

 クルーズにはテレビで、わかりやすいニュースを説明してくれている池上彰さん、ベストセラー『世界がもし100人の村だったら』の池田香代子さん、登山家の田部井淳子さんも所々で乗り込む。楽しい世界一周だ。参加はまだ間に合う。ピースボートの連絡先は(電)0120・95・3740。

 今回のガザ支援船へのイスラエルの拿捕が、再び戦争に発展すると、船に乗ってもいいと言っている方たちが出国できなくなる可能性がある。ピースボートの船の上で、パレスチナとイスラエルの和解ができるといいなと期待している。ぼくの夢が正夢になることを祈っている。 (この回は、2010年6月20日掲載の読売新聞から転載しました)


プロフィール
鎌田實さん
鎌田實 かまたみのる
誕生日:1948年6月28日
諏訪中央病院名誉院長
詳しいプロフィールはこち ら

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