インスリンが嫌いな5つの理由
写真はインスリン自己注射器と、インスリンの量(単位)を調節している様子。注射器という感じはなく、みなさんが考えているよりは操作は簡単です。
糖尿病はゆっくり進行する病気です。糖尿病を発症してから数年は、おそらく食事や運動の自己管理を少し行えば、状態を良好に保つことはそんなに大変なことではないかもしれません。
しかし、発症して10年、20年が経過すると、かなり厳格に食事や運動の自己管理を行っても、次第に薬の追加や、インスリン自己注射が必要になることが多いものです。
わかりやすく言うと、インスリンを出す臓器である膵臓が「くたびれてしまった」ようなものです。この場合、糖尿病の飲み薬を使って膵臓を刺激しても、インスリンはまず出るようになりません。「出ないものは出ない」のです。
インスリンが体から出ていない方には、やはり自己注射で補ってあげることが必要です。血糖値は再び正常値に近づき、合併症から体を守ることが期待できます。
こんなとき、糖尿病患者さんがインスリン自己注射に対する心理的な抵抗感があると、本当は必要な治療を始めることができません。医師の中には、「患者さんが言うことを聞いてくれない」とおこってしまう方もいらっしゃいますが、そもそも、なぜ、このような抵抗感が生まれるのでしょうか?
私が以前、アメリカのサンディエゴでお世話になった糖尿病患者さんの心理について研究されているビル・ポランスキー先生は、論文でインスリンを嫌いになる理由を以下のように述べています。
インスリン自己注射が嫌いな5つの理由
(1)誤った知識、先入観
「1回打つと一生注射を続けなければならない」
「インスリン自己注射だけは打っちゃいけないと人から言われた」
「注射をするようになったら終わりだと言われてきた」(2)闘病への絶望
「もう糖尿病は治らないと思える」
「糖尿病が進行していることを自ら認めることになる」
「糖尿病を良くするために可能な限りの努力をしてきたのに、インスリン注射を始めるなんて不合理だ」(3)恥ずかしさ
「自己注射を人前で打つなんて嫌だ」
「周囲から、インスリンになっちゃったの? と冷やかされるのが嫌だ」(4)活動の制限
「飲み薬ならいつでも飲めるのに、注射は煩わしい」
「生活が制限される」(5)その他
「針が怖い」
「自己注射には、麻薬みたいなイメージがある」
「インスリンが効き過ぎて低血糖になるのが怖い」
「別段、今の自分は体調が悪いとは思っていない。必要ない」
- プロフィール
- 中野 智紀(なかの・ともき)
- 日本糖尿病学会認定専門医
- 1976年埼玉県越谷市生まれ
- 獨協医科大学卒業
- 特技:剣道三段
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