行動パターンをちょっとだけ変えてみよう
がんや心筋梗塞など、ある特定の病気になりやすい性格があるといわれている。
「タイプA 性格と心臓病」(M・フリードマン&R・H・ローゼンマン著、創元社)によると、攻撃的で競争心が強く、せっかちな「タイプA」の人は、狭心症や心筋梗塞を起こしやすい。
このタイプAの人たちは、敵対心と競争心で物事に対処するため、ときには問題を起こすことがある。半面、心配性で、過度に攻撃的な面もある。自己中心的な側面もあるが、大きな力を発揮することも多く、功成り名を遂げる人も多い。
がんになりやすい性格もあるらしい。タイプCという。「がん性格 タイプC症候群」(リディア・テモショック&ヘンリー・ドレイア著、創元社)の著者は、メラノーマ(悪性黒色腫)の患者に、ある性格の人が圧倒的に多いことに気づき、それをタイプCと名づけて、がんと性格の研究を始めた。この本には、感情ががんの発生や回復に影響を及ぼしているということが書かれている。
感情という心でがんと闘えるというテモショックらの主張は過激だが、少なくともストレスをため込まず、うまく感情を表現していくことは、健康にとって重要である。
タイプCは、人にやさしいが、自分のなかに閉じこもりやすく、自分の感情を抑圧してしまう。相手に譲歩し、問題に対して受動的な反応をしやすい。自己犠牲的である。従順であることが人に好かれると思い、従順であることを無理して演じている。怒りや悲しみ、不安などネガティブな感情を出すと人に嫌われると思い、表に出さない。怒るべきスチュエーションで、悲しいと表現してしまう。だが、心のなかは怒りが満ちていることに、本人も気づかずにいる。
タイプAとタイプCの間に、タイプBがある。タイプBは、感情を適切に表現できるタイプといわれている。怒りなどの感情を適切に表現することができる。他人の要求にもこたえられるが、自分の要求もまげない。タイプAが緊張型であるのに対して、タイプBはリラックスが上手である。
もちろん、だれもがこの3つのタイプにピタリと当てはまるわけではない。タイプAとタイプBの中間とか、タイプBとタイプCの境界に位置するなど、中間タイプの人も多いだろう。タイプとは、その人がどんな人間かを示すのではなく、ストレスや心の痛みにどう対処するかという行動パターンなのである。この行動パターンは外界への順応として、幼いころに条件づけられる。
ぼくはどのタイプだろうか。ある精神科医と対談したときに、鎌田はどんなタイプになるか聞いてみた。
「話し方はゆったりしていらっしゃいますが、仕事の量などを考えますと、仕事中毒かもしれません。タイプAよりのBでしょうか。ただ、一人のなかにいろんな要素がありますから、あまり類型化して考えるのもどうかと思います」
うまく逃げられた。
空と山を独り占めしたような、熊本にある「天空の森」という露天風呂。時々ゆっくりとした時間をもつように心がけることで、行動パターンもタイプAからBへ変わっていく
その通りのような気がする。ぼくもタイプAに近いタイプBか、タイプBに近いタイプAだと自己分析している。
どのタイプがいいということではない。重要なのは、タイプは固定的ではないということ。意識的に変えられるということだ。
ぼくらは漠然と、性格は変わらないと思ってしまいがちだ。でも、パーソナリティには、生まれつき決まっていてあまり変わらない「気質」と、環境と のかかわりのなかで変化する「性格」がある。意識的に行動パターンを変えれば、「性格」のほうは変わっていく可能性があるという。
行動パターンを変えるには、まず自分の行動パターンを客観的に知る必要がある。タイプABCという分け方にこだわる必要はないが、自分の行動パターンを知るうえで、参考になる。自分の行動パターンがわかれば、軌道修正しやすくなる。
自分がタイプCに近いと思った人は、ちょっとだけ意識して、「言いたいこと」を言うようにする。ノーと言いたいならば、ノーと言っていい。ノーと言っても、人間関係は壊れない。それで壊れるような人間関係なら、所詮それだけの関係だったのだ。できるだけうちに閉じこもらない。自分のいい点を見つめ、評価する。そうすることによって、タイプBに近づいていく。
タイプAだと思う人は、しゃべり方や歩き方のスピードをちょっと緩めてみよう。そうすることで脳卒中や心筋梗塞を必ず予防できるというわけではないが、生き方にはちょっと余裕ができるかもしれない。
AとBの中間にいるぼくも、もうちょっとゆっくり物事を計画する意識が必要かなと思う。どんなに忙しくても、ゆっくり話し、ゆっくり歩き、ゆっくり食べる。
行動パターンを変えれば、変わりにくいと思っていた性格だって変わっていく。それが長く続けば、生き方だって変わっていくのだ。
- プロフィール
- 鎌田實 かまたみのる
- 誕生日:1948年6月28日
- 諏訪中央病院名誉院長
詳しいプロフィールはこち ら


