2010年5月14日 -- 癌 --

どうしたらがん検診を受けるか

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 2人に1人ががんになる時代、がん検診は重要である。がん対策基本法に基づき、政府はがん検診の受 診率50%を目標にしている。検診率が50%を超えると、がん死亡率が減少するという研究データがある。日本人のがん死を20%減らすことを目指している。

 がん検診が有効なのは、乳がん、大腸がん、子宮頸がん、肺がん、胃がんである。しかし、日本のがん検診の受診率は低い。全体を通して大体20%台といわれている。とても低い。なのに、その受診率がさらに下がった。

 メタボリック症候群を見つけ出し、生活習慣病を改善するために導入された特定健診が開始されてから、全国的にがん検診率が顕著に低下している。市町村の限られた予算や人員が特定健診に振り分けられた影響が出ている。

 しかも、当の特定健診は、厚生労働省の研究班が途中報告した結果では、あまり意味がないことがわかりつつある。メタボの人とメタボではない人では、動脈硬化のリスクがそれほど差がないというデータもある。

 2009年の特定健診の受診率が全国平均で約30%になりそうだと速報がでた。目標の35%には届きそうもない。特定保健指導のほうも、目標25%に対して、約15%。悲惨な成績である。

 このままではがん検診も、メタボ健診も、“虻蜂取らず”になりかねない。国は健診制度の考え方の立て直しを急いだほうがいい。

 ただし、健診の受診率を上げることだけにとらわれてはいけない。2012年には目標(受診率65~80%)を達成しないとペナルティーを課すという国の方針が示されているが、これなどは言語道断である。

 本物の行動変容を起こすためには、ペナルティーを課すような方法はかえって逆効果になるとぼくは考えている。受診した人の、その後の行動変容が大事なはずなのに、受診率達成を最大の目標にすると、目標の設定にミスが起こりやすくなる。数字の上だけよければよいというのではなく、本気で生活習慣を改善していくための動機付けの一つとして、健診が機能しなければならない。

 現在のメタボ健診では、糖尿病や高血圧が心配されても、腹囲が大きくない人は生活指導が行き届かなくなりがちだ。やはり、腹囲さえ正常値ならばよいという発想は誤りで、やせていても、太っていても、とにかく糖尿病や高血圧、高脂血症の予備軍を早期発見し、食事や運動などの「行動変容」を起こし、生活習慣を改善することが重要なのだ。

 がん検診に話を戻そう。

 がん検診もまた、検診を受けない人から受ける人へ「行動変容」を起こさなければならない。がん検診で早期発見できれば、それだけ治療も軽くなるし、治癒率も高い。たとえば、胃がんや大腸がんなら、内視鏡カメラで切除できる。こうしたメリットをよく理解することも、検診を受けるという行動変容につながる。

諏訪中央病院で毎年行っている外国人労働者のために健康診断。病院、医師、通訳などがボランティアで支えている。

 でも、それだけでは不十分。「行動変容」を起こすときの動機付けとして、目的意識をしっかりもつことが重要だ。

 何のために特定健診やがん検診を受けるのかを考えてみよう。健康のため? 健康幻想という言葉がある。「健康のためなら死んでもいい」というブラックユーモアもある。健康は目的ではない。健康は幸せに生きるための一つの道具にすぎない。幸せに生きるためには、健康はあったほうがよい。そのためなら、特定健診やがん検診を受けてみようという気にならないだろうか。

 すべての人がこう思って受診しなくてもよい。まず50%の人が受診してくれると、マスとしてがんの死亡を減らすことができる。自分の人生でやりたいことをかなえるために、特定健診やがん検診を受けるという空気が広まるといいなと思う。


プロフィール
鎌田實さん
鎌田實 かまたみのる
誕生日:1948年6月28日
諏訪中央病院名誉院長
詳しいプロフィールはこち ら

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