2010年2月26日 -- 心の病 --

人の力を借りる

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 アルコール依存症だったK氏が立ち直ることができたのは、なぜだろうか。

 K氏のお母さんからの手紙を読んで、あるヒントに気付いた。

 手紙には、こう書かれていた。

 「多くの方々との出会いのおかげで、息子はお酒と離れて、今は平和です。

 振り返ってみると悪夢でした。この病気を治すのに、本人も家族も大変です。何年もお酒を止めた人が、ちょっとしたことでお酒を口にしてだめになったと聞きました。本人もつらいでしょうが、家族の悲しみは測り知れません。

 この病気でたくさんの家族が苦しんでいると思いますが、家のなかで何とかしようとするのでなく、素直に人さまの力をお借りするのがいいのではないでしょうか」

 人に助けを求められない人がいる。人の手を借りてはいけない、と思い込んでいる。自分でなんとかしなければと思いこんで、もがけばもがくほど、蟻地獄にハマっていく。

 素直に人の力を借りる。これは、行動変容の第一歩だと思う。K氏は、断酒会のメンバーと話し合いながら、自分のありのままをさらけだした。そして、「あの人が続けているのだから、オレも続けよう」と、お互いの存在を自分の助けとしてきた。

 人に助けられた、と実感できた人は強い。その人を簡単には裏切れないからだ。それだけじゃない。人の力を借りると、人に力を貸すことができるのだ。

 K氏は、もともと優秀な男だった。家庭教師としての腕がいい。進学校の子どもたちに勉強を教えて、受験合格へと導いている。

 だが、彼の真骨頂は、学校でうまくやっていけない子どもたちを支えることだった。学校に行けずに苦しむ子、リストカットを繰り返す子、家庭内で暴れる子。そんな子たちに、K氏はとことんつき合う。

 「自分は社会から落ちこぼれたから、落ちこぼれの子どもの気持ちがわかる」と言うK氏には、どうすれば自分を変えることができるのか、勘が働くのだろう。

ぼくの住む岩次郎小屋の雪景色。厳しい冬ももうすぐ終わり、K氏親子の雪解けも近い?

 K氏は、子どもたちに頼られた。頼られれば頼られるほど、力を発揮し、K氏自身も立ち直っていった。

 あるアイドルが、薬物に手を出した。これから薬物依存の誘惑からどうやって抜け出すのだろうか。介護の勉強をはじめたらしいが、臨床実習に諏訪中 央病院グループの老人保健施設「やすらぎの丘」に来たらいい。おじいちゃんたちが喜ぶだろうな。だれかが自分の存在を喜んでくれる。お年寄りたちに慕われ てみるといい。きっと、行動変容の大事なキーになる。

 行動変容の種はいっぱい、あなたの周りに転がっている。あなたには見えないだけ。人間には役に立たないものはない。どんな失敗も、どんな苦労も、どんな泥沼も、ちょっと視点を変えれば必ず役に立つ。

 <バンクーバー>さん、大平光代さんは、本当にすばらしいです。どんな状況になっても、肩の力を抜いて丁寧に毎日を生きています。

 <ムクムク>さん、10年回り道をしても夢を捨てなくてよかったですね。いちばん大事なのは、自分のやりたいことをかなえようとすることです。

 <rosy>さん、比べない生き方って大事ですよね。コメント感謝です。

プロフィール

写真
鎌田實 かまたみのる
誕生日:1948年6月28日
諏訪中央病院名誉院長
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