化粧で心も若返り!
鈴木さん(後ろ)にメークをしてもらい、笑顔を見せる斎藤アキノさん(東京・豊島区の日生デイサービスセンター南長崎で)=上甲鉄撮影
高齢者施設などで、化粧をしてもらったお年寄りが、元気になるって本当?
鏡にうっとり
「ねえ、ステキよ」「このシワがないといいのにねえ」
東京都豊島区の日生デイサービスセンター南長崎。今月中旬、希望者への「化粧ボランティア」が始まると、笑顔と笑い声が自然に広がった。
ボランティアで化粧をしたのは、山野美容芸術短大非常勤講師の鈴木昌子さん(美容文化史)。手際よく髪を整え、顔のマッサージや化粧をしていく。される方も、手鏡に見入って思わずうっとり。
その一人、元気な頃は民謡や三味線、華道などを教えていたが、最近は「化粧クリームを塗る程度」という斎藤アキノさん(95)は、思わず「もう一回お嫁に行かなくっちゃ」と軽口も飛び出すなど上機嫌だ。帰宅後も、「きれいにしてもらった」と家族に話すなど、とても喜んでいたという。
施設責任者の五嶋由美子さんは「普段は入浴後も髪を乾かす程度ですが、化粧や爪のケアなどをしてもらった後は、フロアの雰囲気がとても明るくなります」とその効果について説明する。
高齢者施設の利用者で目立つのは、80~90歳代の女性だ。「この世代は、戦争中に青春時代を送ったため、化粧を禁じられ、戦後も子育てなどに追われていたケースが多かった。だから、化粧の素晴らしさを知ってもらいたいと思いました」と鈴木さん。
学生を引率して施設を訪れる機会も多い。「学生には、いろいろな歴史を知って、お年寄りに接するよう、指導しています」と話す。
認知症に効果
認知症の人が、化粧をすると元気になるという事例も見られる。
東京福祉大教授の原千恵子さん(臨床心理学)が、特別養護老人ホームで暮らす高齢者を対象に“化粧療法”を試みたところ、最初は鏡を見るのも嫌がっていた人が外出願望を示すなどの効果が見られた。
「化粧は絵画や音楽などより取り組みやすく、重い認知症を患っていても自分で手軽にできる。若かった頃を思い出すなど、回想の手段としても良い刺激になり、会話のきっかけとしても有効です」と強調する。
高齢者施設では、レクリエーション活動の一環として、化粧が行われることもある。高齢者向けレクリエーションの研究・指導をしている「高齢者アクティビティ開発センター」(東京)代表の多田千尋さんは「体の栄養と心の栄養の両方がないと、はつらつ感が失われがちだが、高齢者施設では、趣味やおしゃれといった心の面で、栄養失調気味な人が多いのが現状だ。そうした栄養を補給できるような人材を、福祉サイドでも育てていく必要がある」と話している。(内田健司)
手を清潔に 手際よく
鈴木さんに、高齢者に化粧をする際のポイントを聞いた。
〈1〉抵抗力が弱くなっているので、 消毒をするなど手を清潔にしてから行う。
〈2〉肌にくすみがあるので、色はオ レンジ系よりピンク系の方がよい。
〈3〉目の周りが敏感になっているの で、まゆは硬いペンで描くより、まゆ墨を使った方がよいことも。
〈4〉髪の少なさを気にする人が多いので、扱いは丁寧に。
〈5〉スピード感が大切。手際よく行う。
(2010年1月28日 読売新聞)


