2009年12月23日 -- 医療 --

昆布のだしで塩分控えめ

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 信州の秋が終わった。1年の最後に畑が育てるのは野沢菜。これを収穫して大樽に漬け込む。信州の冬には、野沢菜漬けが欠かせない。

 冬に漬けた野沢菜漬けが初夏になってすっぱくなると、地元では赤唐辛子で炒めて食べる。これが実においしい。お陰で一年中、野沢菜漬けから離れられない。

 35年前、ぼくが東京から赴任したころ、長野県は秋田に次いで、日本で2番目に脳卒中が多かった。長野県には当時17の市があったが、なかでも諏訪中央病院のある茅野市はいちばん脳卒中の多い市だった。

約20年前、髪はふさふさ、ひげは黒々だった鎌田實(左)。地域の健康づくり運動に取り組んでいたときの往診風景

 健康づくりのために、年間80回、村々を回った。住民たちに減塩の大切さを何度も繰り返し話したが、はじめはさっぱり効き目がなかった。講演会が終わると、「いい話を聞いた」とか「よくわかった」という声が出るが、最後に車座になってお茶会になると、山盛りの野沢菜漬けが出てくる。それだけではない。オカカをのせて、ドボドボドボっとしょうゆをかけるのである。

 「行動変容」は、簡単には起きないことを教えられた。塩分はうまいから、塩の量はなかなか減らせない。

 タクアンに含まれる塩分は1枚1グラム、梅干が1粒2グラム、みそ汁が1杯1.5グラム。3食でタクアンを3枚ずつ食べれば、それだけで塩分は9グラムである。それに朝と夜、みそ汁を1杯ずつ飲むと3グラム。あわせると12グラムになってしまう。その上、刺身や煮物にしょうゆを使う。パンにも隠し味で塩が入っている。かつて信州では、1日25グラムの塩分をとっている人がけっこういた。

 厚生労働省は1日の塩分の摂取量は10グラム以下になると、高血圧は減り、脳卒中や心臓病は激減すると言っている。日本食は世界のなかでも優れた「健康の食」であるが、塩分が多くなることが最大の欠点である。

 沖縄を長い間、健康長寿王国にさせていた、いくつかの要因のなかでも、最も大きな生活習慣は、塩分の少ないことである。塩分摂取量が1日9.7グラム。都道府県別でいうと、10グラムを切っているのは沖縄しかない。

 沖縄が塩分を減らせたのは、なぜか。

 昆布のダシをうまく使っているからだ。昆布が獲れない沖縄で、一世帯当たりの昆布消費量は日本一だった。

 江戸時代、薩摩藩が北海道の昆布を中国へと輸出する際、劣化した昆布を沖縄に下ろした。このころから昆布のダシ文化が広がっていったという。昆布の消費量と魚の消費量が減ると期を同じくして、沖縄は長寿王国から脱落した。

 ぼくたちの健康づくり運動のスタートは、減塩運動だった。最初はたいへんだったが、地道に理解を広めることで、チェンジはできるのだ。生活習慣をちょっと変えることで、今では長野県は長寿日本一になった。老人も多い。老人が多ければ医療費は上がるはずなのに、長野県は日本一老人医療費が安い。その長野県のなかでは茅野市が市のなかでは最も老人医療費が安い。健康づくり運動が成功したのだ。

 昆布は食物繊維が多く、低カロリー。便通をよくしてくれる。高血圧にもいい。ヨードの補給にも適しており、甲状腺疾患にいいといわれている。昆布に含まれるフコイダンにはがんを抑制する作用があるとされている。

 そして、何より昆布のダシは、塩やみそ、しょうゆを減らし、ウマミのある薄味を実現することができる。

《今週のチェンジ》
 健康の味付けは、昆布ダシで。みそやしょうゆの量を減らすことができる。ダシをとった後の昆布も、しっかり食べよう

 チア・バーバさん、『言葉で治療する』を読んでくれてありがとう。ゆきどりさん、亭主関白だったお父さんのお母さんへの介護、ステキでしたね。あったかいです。

「イベント・フォーラム」に鎌田さんと、女優の秋吉久美子さんの対談「強い心で自分らしい生き方を」をアップしています。

プロフィール
写真
鎌田實 かまたみのる
誕生日:1948年6月28日
諏訪中央病院名誉院長
詳しいプロフィールはこちら

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