山田邦子さんとの再会 その1
皆様、こんにちは。医療情報部の記者が交替で、取材の裏話や読者の方とのやりとりを綴るブログ「医療情報部発」、そのトップバッターを務めることになった中島です。よろしくお願いします。
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さて、今月は、乳がんの早期発見などを訴えるピンクリボン月間でした。全国各地でさまざまなイベントが行われました。講演やウォークイベント、合唱コンサートと大忙しだったのは、そう、タレントの山田邦子さんです。
山田さんは、2007年に乳がんの手術を受けました。夏から秋にかけて、事務所で、テレビ局の楽屋で、乳がん啓発イベントの会場で・・・・山田さんは、テレビでおなじみの笑いをまじえながらも、とても慎重に、誠実に言葉を選びながら、自身の乳がん闘病について、乳がんの早期発見を伝える使命についてお話してくれました。
医師の説明や治療の経過を克明にメモしたノートからも、そんなまじめな性格がうかがえました。インタビューの結果は、読売新聞の「医療ルネサンス」で特集しました。「医療大全」の「乳がん」「乳がん体験」で読んでいただけます。
今月、2年ぶりの取材で山田さんのお話を再び伺うことができました。
「元気でしたか。またあえてうれしいです」東京・四谷の事務所を訪ねると、山田さんは、変わらぬ笑顔で迎えてくれました。
こちらの目的は、創刊135周年記念紙面のインタビュー。医療ルネサンスの反響や、医療記事に望むことを語っていただきました。新聞記事は11月2日の特集紙面で掲載予定ですが、今取り組んでいらっしゃるがん啓発活動への思いや、患者として気づいたことなどたっぷり語ってもらいましたので、ここでも2回にわたり紹介したいと思います。
最近の山田さん
2年前の紙面を持参しました。山田さんは、それを眺めて、「あー。こんなこともあったよね。すっかり元気!なんて答えていたけれど、夏のつらい放射線治療が終わったばかり。まだまだ無理していたのよね。今はずいぶん元気になったなあ・・・」と懐かしそうに振り返りました。
今は、再発予防のホルモン治療を続けている山田さん。通院は半年に一回になったそう。体調も安定し、テレビやラジオの仕事はもちろん、がんの啓発キャンペーンへの参加や、厚生労働省の「がんに関する普及啓発懇談会」の委員も務めています。タレントさんや女優さん、歌手の皆さんなどそうそうたるメンバーを束ねて「スター混声合唱団」を結成、全国で活動を行って、話題を集めています。
山田さんの記事の反響
もう一つ、こちらが持参したのは、看護学部の先生から届いた封書です。連載の4回目「『つらい思い』病院に投書」を題材に、今春、授業をしたそうで、その報告と、学生達の感想でした。記事は、山田さんが術後の放射線治療に通っていた時に、毎日沢山の医療スタッフに乳房を見られることに苦痛を覚えて、カウンセリングを受け、病院に投書、病院側も改善してくれたという内容でした。
「イヤなら違う病院に行けばいいんじゃないかという意見もありますよね。でも、私は医療者側が必死にやってくれているのがよくわかっているし、信頼して大好きでここで手術を受けよう、ずっとつきあっていこうと決めた病院です。戸惑いや困っていることもきちんと話し合って解決してつきあってきたいですよね。患者の立場では、なかなかいえない、という気持ちもよーくわかります。だから私が、おかしいな、と思ったことを体験として広く話すことで、多くの 医療現場も問題に気づいてよりよい形に変わってもらうと嬉しい。そんな気持ちでお話しています」
そう、2年たっても、新聞記事は色々なところで活用してもらっているのです。書いた立場としては、ありがたく嬉しい反面、身の引き締まる思いです。
山田さんが最近、病院で気になること
「乳腺外科だけでなく、産婦人科や放射線科なども受診しているんです。それぞれ違う日だし、けっこう大変ですよ。その中でも、『あれ』と気づくことはありますよ」
たとえばどんな?
「今はすべてが機械化されているでしょう。受診の受け付けとか医療費の支払いとか。機械に診察券を入れて行うけど、お年寄りには難しいのよね。長蛇の列の先頭は大抵、つえをついたお年寄り。どうやっていいかわからずおろおろしている。診察券を裏返しに入れちゃうことだってある。そこに誰か、手をさしのべてくれる人がいれくれたら、と思う。必ずしも職員だけじゃなくて、患者同士助け合ったっていい」
そのほかにも出てくる、出てくる・・山田さんの観察力の鋭さに、よくもそんなに気づくものだなあと感心し、「うん、うん」と、とうなずいてメモをとっていたら、思いがけない展開に・・・
「ところで、この記事では十分伝わっていなかったみたいで、よく誤解を受けるんだけど・・・」
え?なんでしょうか・・・
「私がつらかったのは単に乳房を色々な人にみられたことではないの。手術で傷がつき放射線をあててぐちゃぐちゃになっている乳房を見られるのがつらかったの。それは今でも同じ。すっかり元気になって大好きなボーリングだって、逆立ちだってしますよ。でも、毎日、お風呂に入る時、着替えをするときに乳房をみるたびにストレスがのしかかって来るんです。傷口に塩をぬるって言うでしょう。そんな感じです」
確かに、そこまでの深い気持ちを理解できていなかったかもしれません。ちょっと反省しました。乳がんは切って終わりではなく、その後も長い治療が続きます。再発・転移の不安もつきまといます。そして、何よりもつらいのは、患部を毎日、見なくてはいけないこと・・・
これまで取材した乳がん患者さんからも、そんな気持ちをうかがってきました。
芸能界という華やかな世界で、人一倍明るいキャラクターで活躍してきた山田さんも、繊細な心を持つ一人の患者さん。そんな当たり前のことに、いまさらながら気づかされました。
といっても、タレントとして幅広い年代から支持を集める「邦ちゃん」の発信力は、ずば抜けているのも事実。次回は、今、山田さんが力を入れているがんの早期発見や患者、家族を励ます活動への思いや「秘策」についてご紹介します。
中島久美子 2003年から医療情報部。乳がんや更年期など女性医療を中心に取材してきた。1歳児の育児に奮戦中。鉄道ファン。


