食道がん 最新事情
内視鏡検査で偶然発見
酒を飲むと、たばこが欲しくなる人は多い。でも、どちらも食道がんになる確率を高める(東京都内のバーで)
「胃はきれいですね」。札幌市で建築資材の販売会社を経営する若林繁雄さん(69)は、ホッとした。2004年1月、市内の病院の人間ドックで、内視鏡(胃カメラ)検査を受けた時のことだ。
ところが、内視鏡を抜いていた医師が、「あれ?」と声を出した。食道に気になる病変がある、という。細胞を取って検査に回し、数日後、医師から「悪性の
「食道がん、か……」。どんな病気なのか。治るのだろうか。俺が死んだら家族や、自分で作り上げた会社や従業員はどうなる。三日三晩、悩み続けた。
毎年国内で新たに見つかる食道がん患者の数は、1万6000人余り。胃がん(約11万人)、大腸がん(約10万人)、肺がん(約8万人)などに比べて少ないが、転移しやすいため治療が難しく、毎年1万1000人以上が亡くなる。患者は5対1で男性が多い。
食道は、のどと胃をつなぐ長さ25センチほどの管状の臓器。食道がんは、その管の内側の粘膜に発生し、徐々に深く進行していく。
初期の段階では、症状が表れないこともある。若林さんがそうだった。食べ物をのみこんだ時に胸の奥がチクチク痛む人もいる。がんがさらに大きくなると、食べ物がつかえる感じがし、実際につかえてしまう。
若林さんは、一晩で日本酒一升瓶を1人で空け、さらにウイスキーを飲むほどの大の酒好き。たばこは、がんが見つかる3年前まで1日平均90~100本吸っていた。
酒とたばこは、食道がんを引き起こす最も大きな危険因子だ。それぞれ単独でも良くないが、両方の習慣があるとさらに危険性が増す。若林さんは酒に強いタイプだが、酒を飲むとすぐに顔が赤くなるタイプの人ほど、飲酒で食道がんになりやすい。
検査には、バリウムを飲んで調べるエックス線検査もあるが、最も確実なのは内視鏡検査。虎の門病院内視鏡部長の矢作直久さんは「がん検診や人間ドックでは、胃がんの患者数が多いため、医師は胃を中心に見がち。酒とたばこの習慣がある人は、検査の際、食道もよく見てくれるよう医師に伝えて」と助言する。
食道がんの知識がなかった若林さんは、複数の医師に意見を聞いた。どうやら、大変な病気らしい。そして勧められたのが、札幌市の恵佑会札幌病院だった。「そこでの治療に懸けよう」と決めた。
(このシリーズは、全5回)


