脳卒中 自立へのリハビリ
職場復帰へ「実践の場」
院内の備品を確認する沢井さん(左)。広瀬さん(右奥)ら作業療法士の助言で注意点が分かってきた(北原脳神経外科病院で)
脳卒中から回復し、再び仕事が出来るようになるには時間がかかる。脳卒中を発症した20~65歳の患者約300人を調べた全国の労災病院22施設のまとめでは、1年半後に仕事に就いている割合は半数程度。年に2万~3万人は、後遺症のために仕事に復帰できていないと見られている。そこで一般的なリハビリに加えて、患者の職場復帰支援に取り組む医療機関もある。
東京都八王子市の北原脳神経外科病院では、毎週木曜日の午前中、患者6~7人が、作業療法士の手助けを得ながら、小冊子の作成や、資料の封筒詰め、車いす清掃など病院内の作業を、ボランティアとして手伝っている。
同病院は再就労を目指す患者のリハビリに、パソコン操作や物品発注などを一部取り入れており、その成果を試す機会でもある。担当の作業療法士の一人、広瀬陽子さんは「自分にできること、できないことを実践の場で確かめる意味がある」と話す。
同市在住の沢井恒男さん(57)は2008年6月から参加している。07年10月に脳出血を発症。まひで動かなかった左の手足は、約3か月半の入院中のリハビリでかなり動くようになった。
しかし、道順が覚えられない、電話を受けながらメモを取れないなどの、記憶や注意に関する脳の機能障害が残った。「迷惑はかけられない」と工場長補佐として勤務していた会社は入院中に辞めていた。
沢井さんは「簡単な作業でもいいから、仕事らしいことがしたかった」と話す。
始めてみると、まひが残る左手も使い、紙をめくったり、小さなシールをはったりするのは一苦労。パソコンの表作成でいつの間にか別の列に数字を入力してしまったり、備品補充の手順が分からなくなったりなど、失敗も続いた。
作業療法士の飯沼舞さんは「入力する列に物差しを当てたり、手順はメモに書いたり、といった工夫で間違いは防げると助言をしました」と話す。
1年3か月たった現在、沢井さんは作業に慣れ、自信もついてきた。再就職に向けて準備中だ。
就労支援に取り組む病院はまだ少ないが、都道府県ごとに設置された障害者職業センターなどで、仕事のためのリハビリや相談に応じている。障害者職業総合センター(千葉市)主任研究員の田谷勝夫さんは「再び働き出した後で初めて気づく障害もある。各地のセンターに相談してほしい」と話している。


