2009年9月 6日 -- 癌 --

がん激痛 少量の薬で解消

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脊髄鎮痛法

 がんに伴う痛みの中で、モルヒネなどの麻薬系鎮痛薬を大量に使っても、副作用ばかりが目立って十分な効果が出ないものがある。そうした痛みには数年前から、脊髄(せきずい)に少量のモルヒネを直接作用させて痛みを感じなくさせる「脊髄鎮痛法」が行われるようになり、注目されている。(山崎光祥)

脊髄(せきずい)に少量のモルヒネを直接作用させて痛みを感じなくさせる「脊髄鎮痛法」(別ページ)

 都内の女性(65)は、2008年に腸でがんが見つかり、転移した腰の辺りの背骨がもろくなってつぶれる圧迫骨折を起こした。歩くと腰から太ももにかけて激しく痛むため、寝たきりの生活を余儀なくされた。今年7月下旬には、大量に麻薬系鎮痛薬を点滴し、ベッドでじっとしていても、激痛が続くようになった。

 一方、嘔吐(おうと)や便秘、眠気の副作用が強く、意識がもうろうとした日々が続いた。「腰が痛い」とうなされることもあったという。

 背骨の圧迫骨折は、がんによる痛みの中では最も手ごわい相手だ。それを見て、入院先の癌研有明病院(東京都江東区)麻酔科・ペインクリニック医長、服部政治さんは「一般的な治療では痛みが取れないので、脊髄鎮痛法をやってみませんか」と勧めた。

 飲み薬や点滴では薬が全身に拡散するため、痛みを感じる神経に作用するのは一部にとどまる。それに対し、脊髄を包む軟膜と、くも膜の間(くも膜下(くう))か、さらに外側の硬膜と骨膜の間(硬膜外腔)にカテーテル(細い管)を差し込み、まひさせたい神経の近くにモルヒネを持続的に注入すれば、少量で最大限の効果が得られる。

 鎮痛効果は、硬膜外腔では点滴の10倍で、飲み薬の30倍。くも膜下腔は、そのさらに10倍に達するため、その分、薬の注入量は1時間あたり0・1~0・5ccですみ、薬を詰める携帯型ポンプが小型でも1週間程度は補充なしに使えるという。くも膜下鎮痛法なら自宅でも続けられる。

 女性は、まず硬膜外腔の治療を受けた。背中から太さ2ミリほどの針を硬膜の手前まで突き刺し、その中にカテーテルを挿入。そこからモルヒネを注入すると痛みが大きく改善した。

 そこで、約10日後には在宅療養を目指し、カテーテルをくも膜下腔に入れて反対側をポートと呼ばれる薬液の差し込み口に接続。それらを脇腹から胸にかけての皮膚の下に埋め込んだ。

 体を動かせば今も圧迫骨折の位置に痛みは出るものの、安静時は感じなくなり、吐き気や眠気の副作用も解消した。「食欲も出て元気になった。また家で夫と暮らし、家事をしたい」と笑顔を見せた。

 ただ、首の神経が関係する頭、首、肩に激しい痛みがある場合、首の近くにカテーテルを入れるにはかなりの技術が必要なため、容易には行えない。また、くも膜下腔に針を刺した際に、中の脳脊髄液が一時的に漏れ出るため、治療の初期には若者の半数以上、高齢者の3、4割に強い頭痛が表れる。

 服部さんは「脊髄を針で傷つけないよう、手術には熟練が求められるため、普及はこれからだが、治療によるリスクより、痛みを取る利益が上回る患者には極めて有用だ」と話していた。

脊髄鎮痛法を実施している主な医療機関
◆癌研有明病院麻酔科(東京都江東区)(電)03・3520・0111
◆日本医大多摩永山病院麻酔科(東京都多摩市)(電)042・371・2111
◆日本医大千葉北総病院麻酔科(千葉県印旛村)(電)0476・99・1111
◆京都府立医大病院麻酔科(京都市上京区)(電)075・251・5111
◆九州厚生年金病院麻酔科(北九州市)(電)093・641・5111
◆佐賀県立病院好生館緩和ケア科(佐賀市)(電)0952・24・2171
◆国立病院機構嬉野医療センター麻酔科(佐賀県嬉野市)(電)0954・43・1120
2009年9月3日  読売新聞)

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