老いの達人
詩、絵、恥「三かく主義」
アンパンマングッズに囲まれるやなせさん(東京都新宿区のやなせスタジオで)
1973年に絵本に登場し、88年からテレビアニメ化された「アンパンマン」。今も子どもたちに愛と勇気を伝え続けるヒーローだ。
生みの親である漫画家のやなせたかしさん(東京都在住)は、今年2月に90歳を迎えた。「若い時よりも仕事が多い。断るのが大変ですよ」と苦笑いする。
絵本や童話集、詩集など、今年すでに6冊の本を出版した。法務省や文科省など行政からキャラクター作りを依頼されることも多い。来月にはアンパンマンの映画版最新作が上映される。
さぞや健康な人かと思いきや、「体の中はみんな壊れてる。ハッハッハッ」。あっけらかんと笑う。
60歳代後半で白内障と緑内障。70歳代では心筋
「僕はがんや糖尿病にはならない、そんな病気と闘うことはない、と思っていた。でもアンパンマンも、バイキンマンという敵と闘い続ける。作品と人生とは似てしまうんです」
しかし、病気以上にこたえたのは、93年、最愛の妻が乳がんで亡くなった時。眠れず、食欲がなくなり、次第にやせた。それでも仕事はやってくる。何とかこなしているうちに、少しずつ元気を取り戻していった。
何でも食べるが、糖尿病のため糖分をとり過ぎないよう工夫し、血糖値は良好だ。朝は軽い体操をし、時には好きな歌を歌う。「おなかから声を出すので腹筋が鍛えられます」
歌好きが高じて、84歳でCDデビュー。今も年に5、6回はコンサートで歌を披露する。おしゃれにも気を使い、派手な服も着るようになった。服に負けないよう、気力を奮い起こせるのだという。
「僕は『三かく主義』。詩を書く、絵を描く、恥をかく。もうこの年だから、恥を恐れずに好き勝手にやる。体はボロボロでも、人生を楽しく生きようと思えば、楽しくなるんです」
そんな最近の心境が、先月出版した「たそがれ詩集」(かまくら春秋社)の作品にも表れている。
晩年
老年ボケやすく
学ほとんど成らず
トンチンカンな人生
終幕の未来も
なんだかヤバイ
それでも笑って
ま、いいとするか


