シリーズこころ パニック障害
母の葬儀翌日 最初の発作
パニック障害の体験を振り返る大場久美子さん(読売新聞東京本社で)
心臓などの病気で入退院を繰り返していた母が、10年前の6月に亡くなった。葬儀の翌日、女優の大場久美子さん(49)は自宅のソファで疲れ切った体を休ませながら、母を思った。
誰からも慕われる自慢の母だった。世話好きで、困っている知人を家に泊めてあげたり、バイクにまたがって、近所に手料理を配ったりした。
大場さんが13歳で芸能界入りし、人気アイドルになってからも、実家をひと目見ようと遠くから来たファンを招き入れ、食事を振る舞った。
「母のような女性になりたいと、ずっと思い続けてきました」
葬儀の緊張が解けると、喪失感や悲しみが何倍にもなって押し寄せた。ドラマ収録で最期を
心臓が、取り乱したようにバクバク動き出した。鼓動が「耳に刺さるほど大きく」聞こえた。息苦しくなり、死を意識するほどの恐怖に襲われた。パニック障害の典型的な発作だった。
パニック障害は、一生の間に100人のうち3、4人がかかるとされる頻度の高い病気。脳の一部の過剰な興奮をきっかけに、
発作は30分近く続いた。「疲労のため」と思ったが、2週間後、再び発作に見舞われた。頻度は次第に増し、8月に入ると毎日起こるようになった。発作中に体が硬直し、目の前が真っ暗になることもあった。
最初は心臓病を疑い、内科を受診したが、心電図検査は異常がなかった。そこで心療内科を訪ねたが、病名は告げられず、抗不安薬や抗うつ薬が処方された。大場さんは、風邪薬で意識が遠のくなど薬に敏感な体質で、処方された薬はほとんど飲めなかった。
カウンセリングも受けたが、医師の助言は「仕事をやめなさい」「環境を変えなさい」など現実離れしたものばかり。信頼を抱けず、病院を何度も変えた。
幸い、仕事中の発作はほとんどなかったが、洗髪が怖くなった。体を丸めた窮屈な姿勢で目をつぶると、「何かあったら、裸で泡もついていて逃げられない」と不安に駆られて苦しくなる。飲食店や電車などの狭い場所でも「発作が起こったら逃げられない」と焦り、それが発作を招いた。
通る度に発作が起こる階段、坂、エスカレーター……。苦手なものがどんどん増えていった。
(このシリーズは全6回)


