2009年4月11日 -- 医療 --

精神的要因 無視できず

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顎関節症

神奈川歯科大病院「咬み合わせリエゾン診療科」では、担当の歯科医(右)のほか、心療歯科医(左)も加わり、患者の精神的問題に対応している(神奈川県横須賀市で)

 (がく)関節症で歯科に通ってもなかなか治らず、歯やあごの状態だけでは説明できない症状が続く患者に、精神的側面も含めた治療も行われている。

 神奈川歯科大付属病院(神奈川県横須賀市)の「()み合わせリエゾン診療科」。リエゾンとは、橋渡しといった意味のフランス語から出た言葉で、ほかの科と連携した精神医療のことを指す。ここでは、歯科の各分野の専門家に加え、精神医学を学んだ歯科医や精神科医が協力して診察に当たる。

 同科に通う横浜市の40代の主婦Fさんは5年半前、左のあごの関節の痛みや、かむときにあごがずれるような違和感が出た。歯科で顎関節症と診断されて、安静を保つスプリント(歯科用マウスピース)治療を受けたが、違和感が強く、症状は全く改善しなかった。

 当時、重い病で精神的にも弱っていた夫が、ささいなことでどなったり、暴言を吐いたりすることが増えた。それとともに顎関節症も悪化した。軽いうつ病にもなり、心療内科で抗うつ薬を出されたが、医師と話す時間は5分程度しかなく、つらさを吐き出す場がなかった。

 そんな時に歯科医院から紹介されたのが同大だった。担当の心療歯科医、和気裕之さんは2か月に1回1時間のカウンセリングを行った。和気さんは「顎関節症にうつ病が重なり、症状が悪化した」と診断し、抗うつ薬の服用を続けながら、心身の負担を減らすように指導した。

 Fさんは通院するうちに、こころの状態と体の緊張やかみしめる癖が関係していることを自覚し、リラックスの大切さを理解した。次第に「現実はありのまま受け止め、自分を変えよう」と前向きな気持ちになり、達成感を得るため、車の免許を取ったり、テニススクールに通ったりした。2年近く通院すると症状が改善し、抗うつ薬も不要になった。

 Fさんは「もう痛みはない。かみ合わせは良くないと思うが、違和感はなく、気にならない」と話す。

 心療歯科の専門家は全国的にまだ少なく、外来を設けている大学病院も10か所に満たないという。教授の玉置勝司さんは「通常の歯科分野の専門家だけでは、対応しきれない患者さんがいます。痛みや違和感には、精神的な要因を無視できません」と言う。

 様々な要因が絡む顎関節症。通常の歯科領域を超えた診療が模索されている。

2009年4月3日  読売新聞)

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