かみ合わせ治療で悪化
顎関節症
患者の首の筋膜をほぐす原さん(東京・飯田橋の日本歯科大学病院の顎関節症診療センターで)
きっかけは、生活上のストレスだった。東京都葛飾区の会社員女性Dさん(51)は7年前、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりが激しくなり、早朝に疲れて目覚める日が増えた。症状は約2年の間に、首の痛みや肩のこりに広がり、激しいめまいにも襲われた。耳鼻科や内科、整形外科を回ったが改善せず、不安感など精神症状も出たため、会社を1年半休んだ。
良い治療法が見つからないまま仕事に復帰。あごがゆがんでいたこともあり、原因は歯並びにあるのでは、と考え、インターネットで
当時、奥歯が2本なかったため、今度は、人工の歯を植え込むインプラント治療に期待した。その分野に強いという診療所を受診すると、歯科医は「インプラントを利用した歯列矯正が必要。任せてくれれば顎関節症も治る」と断言した。
前金100万円を支払った治療だが、埋め込んだ根に仮歯を付けた直後から、激しい食いしばりや頭痛、耳鳴り、めまいなどが始まり、仮歯を取って治療を中止した。さらに何か所も歯科医院を回り、昨春たどり着いたのが日本歯科大学付属病院顎関節症診療センター(東京・飯田橋)だ。
2001年に設置された同センターは、生活習慣指導と、あご周辺の筋肉を包む「筋膜」をほぐす特殊なマッサージの併用で症状改善を目指している。センター長の原節宏さんは「顎関節症の多くは、姿勢などによる筋肉や筋膜の問題が関係している」と話す。
原さんは、肩をゆるめてパソコン作業をする、枕を低くするなどを指導。月1回30分のマッサージは、首、肩に加え、患者によっては、口の中にも指を入れて行う。Dさんは次第にあごや体の痛み、めまいが消えた。
「かみ合わせを治すと、良くなるという歯科医院の宣伝をたくさん見ました。情報に振り回され、だまされたような気持ちです」とDさんは振り返る。歯の治療が途中なので、流動食しか口にできないため、近く慎重に歯の治療を再開するつもりだ。
顎関節症をかみ合わせ治療で治そうとして、悪化させる例は多い。原さんは「根拠があいまいなのに、後戻りできない治療は避けるべきだ」と警鐘を鳴らす。


