末梢(まっしょう)神経の再生治療
指導を受ける松尾光代さん。初出場の全国障害者スポーツ大会でメダルを狙う(大分市のプールで)
水しぶきを上げて、大分県
スポーツ万能だった松尾さんの6年間に及ぶ「真っ暗闇」は2000年7月に始まった。ビーチバレーをした夜、右ひざにカミソリで切られるような痛みが出た。砂に足を取られてひねったのか。
右ひざが伸びなくなり、整形外科を受診。半月板が摩擦でケバケバにささくれ立っている「半月板損傷」が痛みの原因と診断され、手術で半月板を削った。
2か月後には、この手術でひざの皿と周囲の軟らかい組織が癒着したとの理由で、はがす手術を受けた。
だが、痛みは「のこぎりを引かれるような感覚」に変わり、松葉づえがないと歩けなくなった。触っただけで痛みを生むひざの末梢神経を5センチ切る手術、
治療を繰り返しても良くならず、動かなくなり、ひざなどの骨がボロボロになってしまった。「次の治療でダメなら脚を切り落とそう」とまで思い詰めた時、主治医から神経治療で実績がある稲田病院(奈良市)を紹介された。院長の稲田
06年8月の手術では、痛みの原因を見極めるために、ひざ上で筋肉を覆う膜を切り開き、ひざの感覚をつかさどる神経をむき出しにした。すると過去の手術で硬くなった部分に圧迫されていた神経内の0・2ミリの栄養血管に血が巡った。
「治療で切断した神経への血流を抑える防御反応として体が筋肉などを緊張させて神経を圧迫し、痛みを発していたのでは」と稲田さん。血流の回復で傷んだ神経に十分な栄養が届く。
翌朝には痛みが消えた。ひざに装具が着けられるため、短い距離ならつえなしで歩けるようになった。
松尾さんには、神経再生治療として、このシリーズで紹介したチューブは使っていない。しかし、稲田さんは「必要ならチューブを使うという選択肢がなければ、手術の対象にならなかった」と言う。
松尾さんは昨年から本格的に水泳を始め、今年、県予選で大会記録を出した。「ひざは曲がらないままだが毎日が楽しい。今が私の伸び盛り」。苦しかった日々をバネに、金メダルを狙う。(山崎光祥)
(次は「リンパ


