2008年9月16日 -- 医療 --

末梢(まっしょう)神経の再生治療

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親知らず抜歯 舌神経切断

お茶を飲みながら家族と話す裕子さん。ケーキも楽しめるようになってきた(新潟県内で)

 右下の親知らずが痛み、裕子さん(33)は2004年11月、新潟市の歯科医院で抜いてもらった。まさか、それが苦しみの始まりになるとは夢にも思わずに……。

 歯茎や舌が右側だけ麻酔をしたように触覚も味覚もない状態が続いた。年明けごろからは、時折、ピリッとした痛みが現れ、強さと頻度が増していった。

 歯科医院を回っても、対処法は見つからず、05年3月、新潟大医歯学総合病院(新潟市)の歯科麻酔科を訪れた。准教授の瀬尾憲司さんが、細いはけや先のとがったもので舌を刺激してみると、右側は、感覚が全くなく、味を感じる舌の表面の「味蕾(みらい)」も失われていた。

 歯茎の内側に麻酔を注射した瞬間、「ビリッときた」という話も引っかかった。麻酔は通常、歯茎の外側に刺すが、効かなければ内側に刺す。その際、まれに近くにある直径約4ミリの舌神経を誤って針で傷つけてしまうことがある。

 「麻酔で右側の舌神経を傷つけ、歯を抜くうちに切断してしまったのではないか。通常の治療では歯が立たない」と直感した。瀬尾さんは、研究者仲間から神経再生に取り組む稲田病院(奈良市)を勧められ、裕子さんを紹介し、05年7月に転院した。

 院長の稲田有史(ゆうじ)さんが手術で口内を開くと、舌神経が切れて、端は団子状になって歯茎の骨にくっついていた。硬くなった部分を切り取ると、切れた神経の両端の間が4センチも離れてしまった。このため、末梢神経の再生を促すチューブを移植した。

 1週間後には痛みが消え、1か月後には薬剤師の職に復帰。痛みで集中力が途切れることがなくなり、仕事に打ち込めるようになった。舌先や舌の縁の感覚も少し戻ってきた。

 「感覚があった舌の左側が発達したようで、最近は親知らずを抜く前より味にうるさくなった。料理も食事も楽しい」と裕子さんは笑顔を見せる。

 新潟大でも裕子さんの治療を機に、末梢神経の再生治療を行う態勢を整えた。歯科治療のトラブルから、唇を触っただけで激痛が走る患者や、口のがんの手術で傷ついた神経の再生にも取り組んでいる。

 瀬尾さんは「神経が切れてしまうと、苦しい痛みに対して、良い治療法がないことが多い。この方法は、そんな患者を救えるのでは」と話している。

2008年9月9日  読売新聞)

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