2008年9月11日 -- 医療 --

過敏性腸症候群

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治療避ける消化器内科も

漢方の説明をする滝川崇弘さん(東京都三鷹市のたきがわクリニックで)

 東京都三鷹市に消化器内科の診療所を開いて5年。国立がんセンター中央病院勤務などを経て開業した滝川崇弘(たかひろ)さんは「がんの早期発見に力を注ぎたい」と考えていた。迅速で痛みの少ない内視鏡検査がインターネットで評判になり、受診者が増えていった。

 ところが、思わぬ壁にぶつかった。受診者の半数が、過敏性腸症候群などのストレス絡みの患者で占められてしまったのだ。

 この病気で特徴的な下痢や便秘は、他の病気でも起こる。大腸がんや、大腸の炎症で頻便になる潰瘍(かいよう)性大腸炎でないかどうかを内視鏡検査で調べることが大切だ。だが腸に異常が見つからず、過敏性腸症候群と診断されると、適切に対応できる消化器内科は少なく、患者が医療機関を転々とする事態が起こっている。

 消化器内科の診療所を開業する医師は、がんの検査や治療に専念してきた人が多い。過敏性腸症候群をきちんと診た経験が少なく、敬遠する医師もい る。 「様々なストレスを訴える患者が多く、一人の問診に20分以上かかることもある。それでは診療所の経営が成り立たない側面もある」と滝川さんは話 す。

 ストレスや腸の不調からうつ状態だったり、イライラを医師にぶつけたりする「やっかいな患者」が目立ち、「うちでは診られない」と、すぐに心療内科などを紹介する医師もいる。だが、紹介先で処方された抗うつ薬で便秘になるなど、症状を悪化させる患者もいる。

 滝川さんも、患者対応のストレスで体調を崩したことがあるが、「腸の不調なのだから、消化器に最も詳しい医師がきちんと診るべきだ。できる範囲で対応したい」と考えた。整腸剤や下痢止めなど、通常の薬が効かない患者も多く、腹痛を和らげる「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」などの漢方を中心に処方することにした。

 職場の人間関係に悩み、腹痛や下痢が続いていた都内の20歳代の女性は、顔色の悪さが目立ったため、血行を良くして腹痛を和らげる「当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)」を処方した。さらに、自律神経を整えるため、規則正しい生活と適度な運動を勧めた。女性は仕事の後、スポーツジムでヨガを始め、3か月後、症状はなくなった。

 滝川さんは「血行不良などの症状を細かく診て、その一つひとつを漢方や運動、食事などで改善していくと、治る実感がわいてストレス緩和につながる のかもしれません。心の影響が大きいこの病気の治療は、患者と医師の相性も大切。私や私の治療と相性が合うと思ってくれる人にはしっかり対応したい」と語 る。

 ストレス社会の今、過敏性腸症候群に対応できる消化器内科医がますます求められている。

2008年9月4日  読売新聞)

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