過敏性腸症候群
ストレス 発症の引き金
通勤のラッシュアワー。電車内で腹痛を起こす人も少なくない(先月、JR東京駅で)
ストレスがかかると、おなかの調子を崩す人は多い。腸は「心の窓」とも言われるほどだ。特に、通勤電車などで腹痛が起きる過敏性腸症候群で悩む人は、軽症を含め人口の10~15%にのぼるとされる。
東京都の会社員Aさん(62)は、20歳代のころから、朝の通勤時、腹痛に悩まされた。家を出て会社に向かおうとした途端、おなかが痛くなり、家のトイレに駆け戻る。
離着陸時、トイレに行けない飛行機も苦痛だった。「シートベルト着用のサインが出ると腹痛になる。飛行機での出張は極力避けました」と振り返る。
役職に就き、コンピューターのプログラム管理など、神経をすり減らす仕事を任され、症状が悪化した。
この症候群は、過去3か月間に月3日以上、腹痛や腹部不快感を繰り返し、排便後は症状が治まる、などの場合に診断される。男性は下痢する人が多く、女性では便秘になる人が多い。
治療では、便の硬さを調節するポリカルボフィルカルシウムなどの飲み薬のほか、少量の抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもある。適度な運動や、キノコ、海藻などで食物繊維を十分に取ることも大切だ。
この病気の原因はよくわかっていないが、心身のストレスが内臓の働きなどを調整する自律神経を狂わせ、発症の引き金になるとされている。
そこで、ストレスを軽減したり、ストレス対処法を身につけたりすると、回復しやすい。Aさんが取り入れたのは、リラックスするための呼吸法だった。
昨年、会社の管理職研修で、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の医師、山本晴義さんから、ストレスを和らげる簡単な方法として、腹式呼吸を紹介された。
次のような方法だ。
〈1〉起床時や就寝時、あおむけに寝たまま、腹部に手を置く〈2〉鼻から空気を大きく吸い、口からゆっくり吐く〈3〉手で、おなかが上下に動くのを確かめながら、5分、10分と、ゆったり無理のない回数続ける。
Aさんはさらに、山本さんに聞き、呼吸法を教える民間の研究所に通った。腹式呼吸と、腕などの軽い運動を組み合わせた15分ほどの呼吸法だった。
Aさんは「やっていると気分が落ち着き、体が楽になる。半年ほどで腹痛が減り、長年悩まされた腰痛も良くなりました」と言う。
山本さんは「人は無意識に1日2万回も呼吸をしています。このうち数十回でも意識して深い呼吸をすると、心が鎮まり、体調も整えることができます」と話している。


