がんと私
働き続けるために
がん患者の4人に3人が「今の仕事を続けたい」と希望しているのに、3人に1人が転職、退職を強いられていた。そんな厳しい現実が、東大医療政策人材養成講座の受講生の知人らが、先日まとめた「がん患者の就労実態調査」でわかった。
講座は、医師や患者などが医療のあり方を考えようと4年前から開かれ、私も1期生だ。知人らのグループはアンケート調査を実施、403人から回答を得た。うち解雇された人が14人、約4割は収入が減少していた。
調査結果をみて、一昨年、乳がんで亡くなった元アナウンサーの絵門ゆう子さんの言葉が頭をよぎった。「自分は必要とされない人間になった……と感じてしまったの」。取材でお会いした際、彼女はがん患者になった思いを、そう表現した。治療に時間を取られ、副作用などで具合が悪くなり、仕事や日常生活がままならなくなるかもしれないという不安や自信喪失によるものであった。一方で、「世間のがんに対するバリアの存在に気づくことが多い」と言う。社会の 多くの人が「がん=死」といった固定観念を持ち、がん患者を特別視しがちな現実を憂いた言葉でもある。私も患者になって同じことを感じていた。
そうした状況に対し、米国のがん経験者らの団体が1986年に、「キャンサー・サバイバーシップ」という理念を提唱した。治療の効果や生存期間ばかりに注目するのではなく、いかにその人らしく生き抜くかを重視しようという考え方だ。そのために患者自身も変わらなければならないが、がん患者の就労環境の整備など社会を変える必要もあるという。今回の調査では、働き続けるためには「治療や体調に応じた働き方の選択」や「がんと治療への正しい理解」を求める声が多かった。こうした対策を進めるために、日本でもサバイバーシップの理念を育てていきたい。


