2008年8月18日 -- 歯科 --

歯科医 つれづれ記

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(26)根元の虫歯 高齢者はご用心

 日本は世界一の長寿国である。そればかりか、健康で自立した生活ができる健康寿命も一番だという。観光地に出かけると、元気で活発な高齢者の方を数多く見かける。

 私のクリニックにも、義歯が合わない、歯がぐらぐらしているなどの患者さんの他に、前歯6本を見栄えよくして欲しいとか、全体的に歯を白くしてくれなどと、今までではあまり経験しなかった、まさに元気を地で行く高齢者の方も多く来院する。それも、私よりはるかに先輩の、いうならば後期高齢者とでも言うべき方々である。時代は変わったものだ。

 元気な高齢期を過ごすために歯が大切なことはもちろんだが、高齢になったら今までとはちょっと違うタイプのむし歯への注意が必要である。「根面(こんめん)(しょく)」と呼ばれるもので、歯の根の部分に出来るむし歯のことである。これが最近では結構問題になっている。

 むし歯が減り、歯周病に対しても治療法が進んだお陰で、高齢になっても歯を失わない人が増えてきた。それはそれで素晴らしいことだが、いかに歯周病対策が進んだといっても、程度の差こそあれ年齢と共に歯周病も少しずつは進行していく。その結果、歯茎が下がって、普段は隠れて見えない根の部分が露出してくる。皆さんがよく言う、歯が長くなってきた状態だ。

 ここには、歯を外敵から守ってくれるエナメル質という(よろい)がない。むき出しになった根の部分はエナメル質に比べて軟らかいため、むし歯になり易く、しかも進行が早い。歯磨きが難しい場所で、高齢者になると唾液(だえき)の分泌が少なくなることも、問題を大きくしている。

 歯茎の下に隠れたままむし歯になることも多く、なかなか自分では確認できず、歯周病の治療で歯茎が引き締まってきて、はじめてその存在が分かるなんてこともある。歯科医側から言わせれば、治療処置が難しいので十分な成果が期待できないのも問題である。

 そんな訳で、高齢になって、節制の甲斐(かい)もあって多くの歯を残せたら、今度は根面う蝕に要注意だ。予防が難しいといっても、むし歯であることには変わりはないから、食生活をはじめとした正しい生活習慣を守り、むし歯を引き起こす細菌の塊(プラーク)をきちんと除去することを心がける。そのためには、歯間ブラシやデンタルフロスなどの歯間清掃用具は不可欠だ。あとは半年に1度、歯科医院に行って定期健診と徹底したクリーニングを受けることが大切だ。

 豊かな高齢期を、さらに元気に! なに? あまり元気だと周りからうるさがられる? まあ、それもありますけれどね。(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。次回は29日)

プロフィール

安田 登  やすだ・のぼる
 1969年東京医科歯科大卒。パリ大学留学、第一生命日比谷診療所、東京医科歯科大臨床教授を経て東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。
2008年8月15日  読売新聞)

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