2008年7月27日 -- メタボリック --

クローズアップ2008:メタボ健診 制度複雑、混乱続き

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 医療費抑制を目的に始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)が、自治体の健診現場に少なからず混乱をもたらしていることが、毎日新聞の調査で浮き彫りになった。背景には、制度変更についての周知不足や地域の実情を十分に踏まえない国の制度設計があり、後期高齢者医療制度と同様に地方の不信感を招いている。【永山悦子、大場あい】

 ◇受診できない人多数/自治体の財政圧迫

 ◇慢性腎臓病患者増えてるのに…検査は除外

 6月に健診を始めた長野県飯山市では、受診できないまま健診会場を後にする人が相次いでいる。

 市町村は従来、老人保健法に基づいて40歳以上の住民を対象に基本健診を実施してきたが、メタボ健診は保険者(市町村や健康保険組合など)別に実施されることになった。会社員の場合、企業の健保で健診を受けるが、被扶養者の妻も、夫の加入する健保が指定する機関で受診しなければならず、原則として市町村の健診は受けられなくなった。

 この変更がちゃんと周知されていないため、健保の被扶養者が市の健診会場に来てしまう。市内に健保組合が指定する健診機関がない住民が「遠くまで行けないから受けさせて」と訴えるケースもあるという。

 一方、近畿地方のある市では、1934年1月生まれの妻(74歳)と9月生まれの夫(73歳)が健診会場に来たが、妻だけが健診を受けられず怒って帰るケースがあった。

 メタボ健診は、ある年度中に40~74歳になる人のうち、その年度を通じて一つの医療保険に加入する人が対象だ。妻は今年度中に75歳の誕生日を迎えるためメタボ健診の対象外で、健診を受けに行った日の段階では、75歳以上の後期高齢者の健診対象でもなかった。同様のことは4月2日以降に転職や引っ越しで加入保険が変わった人にも起こりうる。

 東京都府中市では、06年度の途中に国民保険に加入したり、離脱した人は計約1万4000人に上った。担当者は「国保は異動が多い。今年度は9月30日までの加入者は受診できるようにするが、健診実施期間を過ぎる10月以降の加入者には対応できない」と説明。「非常に複雑な制度のため、住民は納得しにくいと思う。『国の制度上の欠陥です』と説明するしかない」とため息をついた。秋田県のある市の担当者は「加入保険や年齢の違いによって、健診や保健指導が異なる事態に、地域保健活動をしてきた視点から苦慮している」と打ち明けた。

 毎日数十本の問い合わせや苦情の電話を受けた自治体もあった。

 ◇自治体担当者「無駄な政策ばかり」

 医療費を抑制するはずのメタボ健診が、かえって自治体の懐を圧迫し、思わぬ影を落としている。

 北海道富良野市は、昨年度まで実施していた国民保険加入者に対するがん検診への助成(500~2000円)を廃止し、浮いた1600万円をメタボ健診の無料化に充てた。担当者は「受診率の目標が達成できなければ、ペナルティーによって後期高齢者医療制度への拠出金が増額される。目標達成に向けた受診無料化の財源として、がん検診の助成を削った」と説明する。

 国は昨年策定した「がん対策推進基本計画」で、がん検診受診率を5年以内に50%とする目標を掲げた。この担当者は「がん検診の受診率が落ち込む恐れもあるが、今はメタボ健診の実施に必死で、がん対策まで考えられない」と打ち明けた。

 メタボ健診では、従来の住民基本健診で実施されていた血清クレアチニン検査が外された。慢性腎臓病の早期発見に有効とされるこの検査の除外にも疑問の声が上がっている。

 長野県飯山市は「人工透析を始める患者が増えており、保健師からも血清クレアチニン検査を残してほしいと要望があった。だが、国や県からの補助がなく、予算上難しかった」と明かす。

 毎日新聞の調査では、今年度の健診で、血清クレアチニン検査を独自に受診者全員に実施すると答えた市区は48%にとどまり、43%は実施しないと答えた。慢性腎臓病の患者数が全国で約2000万人に上るという実態に逆行している。

 鹿児島県のある市の担当者は「これまでも医療費削減目的で、成人病対策、生活習慣病対策をやってきたが、成功した試しがない。今度はメタボ対策をうたっているが、どこまで無駄な政策を出し続ければ気が済むのか」と国を批判する。

 ◇「周知の努力期待したい」--厚労省推進室

 今回の調査結果について厚生労働省医療費適正化対策推進室は「制度変更によって、受診できない住民が出るというのは誤解だ。特定健診対象者以外は 国の補助の対象にはならない方向だが、各保険者が独自の健診を実施することは禁じていない。国にも国民からの問い合わせがあるが、特定健診は2年前に決定 され、国は各地で説明会などを開いてきた。今後は各保険者の周知の努力に期待したい」とコメントした。

毎日新聞 2008年7月27日 東京朝刊

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