歯科医 つれづれ記
(23)むし歯の始まり 唾液が修復
「チチンプイプイ、痛いの痛いの飛んでいけ~!」なんて言いながら、ケガをした傷口につばをつけたりしませんでしたか?
今の子供たちはともかく、私の時代にはよくやっていたものだ。実際2~3日もすれば傷はすっかり良くなっていたし、猫も犬もケガをするとぺろぺろとよくなめているので、やはり、唾液(だえき)は殺菌力があって効果的なのかなと思っていた。
ところが、傷の専門家(夏井睦・石岡第一病院傷の治療センター長)によると、確かに唾液の中には抗菌作用を示す成分はあるが、とても殺菌するレベルではなく、傷口を覆って乾燥するのを防いでいるにすぎないという。急場ならいざ知らず、やはり清潔な水で洗って乾燥させないことが一番らしい。
しかし当然のことながら、唾液は口の中では大活躍をしている。まずは、食物を食べやすいように丸めて消化を助け、話すときには舌が滑らかに動きやすくする。唾液が少なければうまく食事できないし、口もよく回らない。たまには滑らか過ぎて、口角泡を飛ばし、他人様に迷惑をかけている人もいるが。
むし歯と歯周病は、いずれも口の中にいる細菌が関係しているが、唾液はこれらを洗い流す役目がある。昼間の時間帯はよいが、睡眠中は唾液分泌の方もお休み時間となって十分に出ないため、細菌にとってはまさに鬼の居ぬ間の大暴れの時となる。その結果、むし歯や歯周病にかかりやすくなるし、朝一番の口臭の元にもなる。
だから、寝る前にはしっかり歯磨きをして、細菌を取り除いておかなくてはならない。昔のコマーシャルに「歯周病菌は夜眠らない」なんていうのがあったが、まさにその通りである。
その他、唾液には酸によって分解された歯のエナメル質を修復してくれる役目もある。細菌が飲食物中の糖分や炭水化物を利用して酸を発生し、眼には見えない程度だが、エナメル質の表面をとかしてしまう。これがむし歯の始まりである。
まあ、それでも人間の体はよくしたもので、食後たっぷりと出てくる唾液に含まれる成分が、減った部分を補ってくれる。ただ、修復にはとけるスピードの何十倍もの時間が必要なので、食後しばらくは何も食べない方がよい。とくに細菌に餌を与え続けるかのように、だらだらと間食をするのが一番いけない。昔から言われているように、おやつは10時と3時、それ以外は取らないように。
「チチンプイプイ」では大した役をしなかった唾液だが、歯を守ることにおいては重要だ。ストレスを発散して、ガムでも噛(か)んで、唾液をたくさん出しましょうか。
(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。次は7月18日)
2008年7月4日 読売新聞


