2008年6月18日 -- 歯科 --

歯科医 つれづれ記

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(21)もしものときの親知らず

 久し振りに大学時代の同級生5人と酒を酌み交わした。あるものは大学教授となり、あるものは地元に帰って地域医療に貢献するなど、それぞれが社会的に責任ある立場となっている。

 とはいえ、40年以上も付き合っている仲間である。あっという間に学生時代と同じ雰囲気になり、俺(おれ)がいなけりゃお前達は卒業できなかったとか、俺はあの試験を3回も受けたとか、昔話に花が咲いた。もちろん、全員が歯科医だから歯に関する話題も多くあった。その中で、親知らずの処置に関しては、抜くの、抜かないので様々な意見が飛び交い、なかなか一致することがなかった。

 「親知らず」、厄介な歯の代名詞みたいなものである。文字通り、親が知らない成人になってから生えてくる。上下左右で合計4本あり、奥歯のさらに奥の狭いスペースに無理やり生えてくる感じである。従って、多くはまともな方向に生えていない。真横に寝た状態で、頭だけ歯茎の上に顔を出しているものから、前の臼歯(きゅうし)を突き上げんばかりに生えているのもある。

 大昔、まだ人類が硬いものをバリバリ食べていた時代は、顎(あご)も立派で大きく、親知らずも堂々とまっすぐに生えていたと思われる。ところが、人類が食物を調理によって軟らかくして食べるようになると、残念ながら顎の骨が退化して小さくなってしまった。

 まっ、簡単に言えば「やさ男」のようになってしまったわけです。この小さな顎は、すべての歯を収めるには十分とは言えず、後から生えてくる「親知らず」は必然的にはみ出ることが多くなった。最近では場所がないとばかり、生えてこない人も多い。

 いずれにしろ、あちこちに向いた親知らずは、むし歯になりやすいし、歯周病にもなりやすい。そして、自分だけ悪いのならばまだしも、他の歯にも悪影響を及ぼしやすい。

 さて、この厄介な「親知らず」をどう扱うかが問題である。トラブルを生じやすいので、すべて抜いてしまえという歯科医もいる。しかし、抜くといっても結構大変で、容易ではない。

 そこで、何とか抜かずに残しておこうという意見も多い。むし歯になっても治療が面倒で、すっかり邪魔者扱いされている親知らずだが、全く役に立たないわけではない。もし手前の奥歯が抜けてしまったら、ブリッジの支えの歯として利用できるし、歯の抜けたところに、思い切って親知らずを移植することもできる。

 こうなれば、何とかむし歯や歯周病にならないように、一生懸命磨いて残しておくというのがよいのでは。それでも問題を生じたら、そのときは、残念ですけどあきらめて下さい。
(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。次は20日)

2008年6月6日 読売新聞

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