2008年6月16日 -- 癌 --

がんと私

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闘病記に「生き方」学ぶ

本田 麻由美記者

 「専門書も含め、あるだけ全部買ってきて」。6年前の5月31日、「乳がん告知を受けた」と夫に電話で報告した際、「本屋に寄って帰る」という彼に、私は強く訴えた。それだけ不安だったのだ。

 乳がんとは、どんな病気で治療にはどんな選択肢があるのか。予後はどう推測されるのか。分からないということが怖かった。その夜から医学書を読みあさり、インターネットで調べる日々が続いた。生きるための希望を探す作業でもあった。

 ただ、闘病記は敬遠していた。一度、ジャーナリストの故・千葉敦子さんの「乳ガンなんかに敗(ま)けられない」を読んだが、病気を受け止め「前進あるのみ」と立ち向かう千葉さんの強さに圧倒され、「涙に明け暮れている私は、なんて情けない人間なんだ」と落ち込んだ。乳房温存手術後に全摘手術が必要になり、すぐ局所再発が見つかるなど治療の選択に迫られ続け、医学書しか興味が持てなくなっていた。

 しかし、3度目の手術後、再々発が怖くて、不安で押しつぶされそうになっていたころ、ふと「他の人はがんとどう向き合い、不安な気持ちとどう付き合っているのか」と知りたくなった。そんなことは医学書には書いていない。そこで、何冊かの闘病記を読み、「そんな風に考えたのか」「その人なりの生き方が一番なんだ」と感じ、少し落ち着いた。

 このたび、私も闘病記「34歳でがんはないよね」(エビデンス社)を上梓(じょうし)した。一度は乳がんを見落とされ、それから3か月後の告知、3度の手術などを経て、このコラムを連載し始めるまでの出来事と心の揺れ、様々な人との出会いを詳細にルポし、タイトルの由来も前書きに記した。ある専門家は「先輩患者らがつづった闘病記は、医師や看護師の説明だけでは分からない貴重な“生き方情 報”だ」と位置付ける。そんな一つの事例報告になればと願う。

2008年5月25日 読売新聞

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