脳を元気に
(1)運動で血流高まる
いつまでも若く、柔軟な頭脳を維持したい。そんな願いに科学の光が当たる。実証されつつある脳を元気にするコツを紹介する。
東京都品川区中延のアーケード街近くに、楽器メーカー「ヤマハ」が開設した「音楽と健康スタジオ」教室がある。リズミカルな音楽に合わせ、熟年世代から80歳代までの10人が、手足の曲げ伸ばし、ストレッチ、軽いエアロビクスなどに汗を流す。合間には、合唱団のような発声練習も行う。振るとマラカスのような音を出す「サウンドフープ」という器具を使い、リズムに体の動きを乗せていく。
教室は、「運動と音楽の両面から脳を刺激する」(同社の宮下順治・プロジェクトリーダー)ことを目的に、2005年から始まった。1回1時間、月3回。「無理せず、継続が大事」という。
予備的な実験で、教室の参加者は、思考、計算などをつかさどる脳の前頭葉(額に近い部分)の血流が高まることが確認された。会員約200人へのアンケートでは、「気持ちが明るくなった」「若返った気がする」と効果を挙げる声が多く寄せられた。
運動が、筋肉や心肺機能を向上させるだけでなく、脳を元気にさせるという研究成果が、次々に発表されている。
例えば米国の研究チームは、ネズミに自由に運動させると、神経細胞を元気にするたんぱく質の一種「BDNF」が脳内で増加することを突き止めた。「BDNFを増やす引き金は、筋肉細胞が分泌する別のたんぱく質」と、東京大の柳原大・准教授(身体運動科学)は説明する。
「ネズミは自発的には激しい運動をしない。人間ならウオーキングや水泳、ハイキングなど適度な運動が当てはまる」と柳原准教授は勧める。運動後の壮快感は、脳が元気になるサインでもあるようだ。(科学部 原田信彦)
2008年6月11日 読売新聞


