高齢者と薬
鎮痛薬常用 胃腸に潰瘍
以前に服用し、副作用を起こした鎮痛薬を手にする吉野智子さん(神奈川県内の自宅で)
関節リウマチを患う神奈川県の吉野智子さん(63)は約15年間、ほぼ毎日、痛みを和らげる薬のロキソプロフェンナトリウム(商品名ロキソニンなど)を服用してきた。
関節リウマチは、手や足などの関節が、炎症によって破壊されて動きにくくなり、腫れて痛む病気だ。一日中、熱を持って続く痛みで、寝込む患者も少なくない。この薬は、炎症を鎮めて痛みを抑える。
吉野さんは昨年11月、関節ではなく、おなかに、ズキズキと重い痛みを覚えた。外国人に日本語を教えるボランティアをしており、当時、地元の国際交流イベントに参加するなど多忙だったため、「疲れが出たのかな」と思っていた。
しかし、痛みは治まらない。食後数時間すると痛み出し、眠れないこともあった。翌月、病院に行くと、十二指腸潰瘍(かいよう)と診断された。主治医は「ロキソプロフェンナトリウムの副作用も一つの要因」と判断した。
この薬は、「非ステロイド性消炎鎮痛薬」と呼ばれる痛み止めの一つ。この種類の薬は、痛みを抑える反面、胃腸などを荒らす副作用がある。長期間、続けて服用し、症状が進んだ場合、胃などに穴が開き、吐血や下血をし、命を失うこともある。
吉野さんは、胃腸の粘膜を保護したり、粘膜を傷つける胃酸の分泌を抑えたりする飲み薬で治療を受けた。2か月後には、おなかの痛みは消えた。
今はリウマチの病状を抑える抗リウマチ薬を飲んでいるが、ロキソプロフェンナトリウムの服用はやめた。「鎮痛薬をやめても、それほど痛みはない。ついつい惰性で薬を飲んでいた」と吉野さん。
非ステロイド性消炎鎮痛薬は、リウマチのほか、軟骨がすり減って痛む変形性関節症や、背骨を通る神経が圧迫されて痛む椎間板(ついかんばん)ヘルニアなど、高齢者に多い病気の患者に、広く使われている。
東邦大医療センター大森病院(東京都大田区)リウマチ膠原病(こうげんびょう)センター長の川合真一さんは「リウマチには抗リウマチ薬を上手に使い、変形性関節症では適度な運動で関節の動きを良くして痛みを取り除き、鎮痛薬の使用を減らすことが大切」と話す。
高齢者にとって注意が必要な薬をまとめた国立保健医療科学院の研究では、非ステロイド性消炎鎮痛薬の中では、とりわけ成分が血液中に長く残り、副作用が起きやすいナプロキセン(商品名ナイキサンなど)やオキサプロジン(同アルボなど)などへの注意を促している。
2008年5月13日 読売新聞


