2008年5月 8日 -- 癌 --

がん治療

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新薬 延命効果わずか

 新しい抗がん剤が続々と登場している。その実力はどの程度なのだろうか。

 前立腺がんには現在、治療薬「ドセタキセル」の承認申請が行われている。

 この薬を前立腺がん患者に使って効果を調べる臨床試験が欧米で2件行われ、2004年に「死亡リスクがそれぞれ24%、20%低下した」との結果が出た。

 これを受け、メーカーは「死亡リスクが大幅に低下した」と発表した。「生存率が大幅に上昇した」という試験の責任医師のコメントつきだ。

 こう聞けば、この薬で多くの患者が救命されるようになったと、誰しも思うはずだ。ところが、これらの試験をよく調べると、そうはなっていなかった。

 2件のうち、「死亡リスクが20%低下した」という臨床試験は、転移があり、ホルモン療法も効かない前立腺がん患者約800人を対象に行われた。治療後の平均的な生存期間(中央値)は、ドセタキセルを使った場合に18か月で、従来の治療法の16か月に比べ、2か月長いだけだった。

 生存率のグラフを見ても、いずれの方法でも、患者は治っていない。もう1件の試験でも、患者の生存期間は、この薬で2か月延びたにとどまる。

 筑波大泌尿器科教授の赤座英之さんは「この薬でかなりの期間、生きられる人もいれば、そうでない人もいて、延命効果が平均2か月ということ。ただ、どの患者に使えば有効か、事前には分からないのが抗がん剤の限界」と言う。

 新しい抗がん剤の多くは、白血病などを除くと、数か月の延命効果が認められたに過ぎず、がんを完治させるわけではない。米国では、膵臓(すいぞう)がんで2週間の延命効果があったとして承認された薬もある。

 イタリアの研究者が、1995~2000年に欧州で承認された抗がん剤12種類を調べたところ、従来の治療法に比べ、患者の生存率などの点で改善がみられなかった。

 一方、スウェーデンの研究者は2005年、「欧米20か国で1993年以降8年間で、がんによる死亡率が16%低下した。その要因の3割に、新しい抗がん剤が寄与した」との調査をまとめた。

 がんを完治させる新薬が見当たらないのに、新薬で死亡率が低下したとは不可解な話である。

 がん死亡率低下の要因には、禁煙や検診の普及などがあるとされるが、この調査で、こうした要因がどう考慮されたか不明だ。英国の研究者は「この調査は使用した統計データが不適切で、結論は誤り」と指摘している。この調査は製薬企業の資金援助で行われた。

 抗がん剤の効果を過大に評価するのは、患者に過剰な期待を抱かせることになり、問題がある。

2008年5月1日 読売新聞

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