2008年4月29日 -- 医療 --

ジストニア 首・手などが勝手に動き、仕事に支障も。治療法は。

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 ◆ジストニア 首・手などが勝手に動き、仕事に支障も。治療法は。

 ◇服薬、注射、磁気刺激で脳の異常信号制御--初期ほど効果、早めに神経内科へ

 神奈川県三浦市の会社員、加藤雄一さん(29)は5年前、昼食時に不思議な体験をした。はしを口に運ぶと、顔がひとりでに右を向く。「寝違えたかな」。その日から気を抜くと顔が右を向くことが続く。3カ月たっても改善せず、内科医院へ。診断は肩こり。「気のせいでは」とも言われた。しかし、処方された湿布薬の効果はなく、複数の医療機関を受診して、半年後に確定した病名は「ジストニア」。「痙性斜頸(けいせいしゃけい)」だった。

 ■ストレスが引き金

 ジストニアの定義は「反復性や捻転(ねんてん)性(ねじれ)の異常な筋収縮によって特定の動作や姿勢が障害される病態」。梶龍兒(かじりゅうじ)・徳島大教授(神経内科)は「人の運動をつかさどる脳のプログラムの異常で起きる」と説明する。「人間の動きの多くは自動化されている。その動作を制御する脳のプログラムが壊れ、筋肉が意図した動作を取れなくなった状態だ」という。

 ジストニアは症状の出る部位で複数の種類がある。首の筋肉がこわばり、まっすぐ前を見られなくなる「痙性斜頸」。「眼瞼(がんけん)けいれん」はまぶたの筋肉が制御できず、まばたきが異常に増えたり、まぶたが閉じたままになる。「書痙(しょけい)」は手や腕の筋肉に生じる。声帯が動かせず、声が出 せなくなる「けいれん性発声障害」もある。いずれも運動を制御する大脳基底核の異常が原因で、ストレスが引き金とされるが、詳しい仕組みは不明だ。他に抗うつ薬や睡眠薬の副作用による「2次性ジストニア」もある。

 ■特定動作時に症状

 特定の動作をした時に症状が出るのがジストニアの特徴だ。ペンを持つと手がこわばる書痙の患者が、はしは自在に使えることがある。職業と関連した症例も多い。大量の字を書く税理士や警察官に書痙がよく見られ、ピアニストなどの手や指が演奏時だけ硬直する「音楽家のけいれん」というジストニアもある。梶教授は「命にかかわる病気ではないが、仕事を続けられず苦しむ人が多い」と話す。

 加藤さんの主治医、聖マリアンナ医大の堀内正浩講師(神経内科)は「正確な診断ができる専門医が少ないことが問題だ」と指摘する。痙性斜頸を肩こりや寝違えに、書痙を腱鞘(けんしょう)炎などに誤診される例は多い。

 ジストニアは「知覚トリック」という方法で、一時的に症状が軽くなることがある。痙性斜頸の人があごに手を当てると顔が正面を向く、眼瞼けいれんの人が片目を手で覆うと、他方のまぶたが開く--などだ。これも誤診や「気のせい」などの誤解を招く要因になる。梶教授は「昔はノイローゼと診断された例もある。今も社会的認知は低く、ジストニアで労災認定された例はないはずだ」と言う。

 ■異常な信号を制御

 治療法は(1)内服薬(2)神経ブロック注射(3)ボツリヌス毒素注射(4)経頭蓋(ずがい)磁気刺激(5)脳深部刺激--に大別できる。内服薬はパーキンソン病用の薬がよく使われる。神経ブロックは麻酔薬で神経の異常な信号伝達を妨げる。ボツリヌス毒素注射は猛毒のボツリヌス毒素を硬直した筋肉に少量注射し、弛緩(しかん)させる。いずれの注射も数カ月おきに打ち続けなければならず、次第に効果が薄れる問題がある。

 経頭蓋磁気刺激は頭に磁気を発するコイルを当て、脳の異常な信号発信を抑える。外来で受けられるが、効果は数日間。手術で頭蓋骨に穴を開けて大脳基底核に電極を入れ、ペースメーカーで脳の信号を制御するのが脳深部刺激。効果は高いが、数年に一度、手術でペースメーカーの電池交換が必要だ。最近は、筋肉の硬直を取るはり治療を組み合わせることも多い。

 最近の調査で国内の患者数は約2万人とされるが、実数はその2倍近いとの見方もある。堀内講師は「どの治療法も病気の初期が効きやすい。気になったら早めに神経内科へ」と話す。

 全国の患者約150人が参加するNPO法人「ジストニア友の会」は05年に発足。30年前に痙性斜頸になった佐藤治子副理事長(49)=東京都=は「さまざまな治療を受けてきた会員の経験を共有したい」と言う。ホームページ(http://www.geocities.jp/dystonia2005/)。【奥野敦史】

毎日新聞 2008年4月29日 東京朝刊

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