2008年4月26日 -- 心の病 --

精神科救急

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自殺未遂者の生活支援

退院後、一人暮らしの自宅で花を育てる女性。環境を変え、気持ちも落ち着いた(神奈川県内で)

 神奈川県の60歳代の女性は昨年、農薬を飲んで自殺を図り、北里大病院救命救急センター(同県相模原市)に運ばれた。

 呼吸困難になり、約2週間、人工呼吸器を付け、一命を取り留めた。当時、女性は、夫の暴言、暴力に悩まされ、うつ状態になっていた。同センターの対応は、身体の治療にとどまらなかった。

 主治医になった上條吉人さんは、救急医でありながら、精神科の診療経験が豊富な精神保健指定医。人工呼吸器を外した後、ベッド脇で女性を診察し、話を聞くと、「乱暴な夫と離婚して再出発したい」と言う。

 「家庭での不安を取り除くことが、精神状態の改善には最も大切」と上條さんは考えた。副作用が少ない抗うつ剤などを処方、心理士で退院後の生活相談に当たる「ケースマネジャー」の神谷美智子さんに連絡を取った。

 神谷さんは、離婚を希望する女性に、無料の法律相談や、一人暮らしの際に役立つ福祉制度などの情報を紹介した。女性の親族も交え、その後の生活について一緒に話し合った。「細かい不安まで相談できて、だいぶ気持ちが楽になりました」と女性は語る。

 退院後の間もない時期は、親族宅に身を寄せ、退院から数か月で離婚し、一人暮らしを始めた。今も数か月に1度、神谷さんに近況を報告している。環境を変え、気持ちも落ち着いた。「もう死にたいと思うことはない」と話す。

 同センターに搬送される患者の10~15%は自殺を図ったケースで、事故によるショックなども含めると、約30%がなんらかの精神的な問題を抱えている。このため、同センターは、精神科と連携して患者の診察に当たってきた。

 ケースマネジャーの役割も重要だ。自殺未遂者や家族に、病気の自覚がなければ、病気や治療の意味を時間をかけて説明する。また、患者に身寄りがない場合は、民生委員などに連絡を取り、退院後のケアにもかかわる。

 国内の自殺者は、1998年以降、年間3万人を超える。「自殺の再発防止には、適切な治療や生活環境の改善が必要で、精神科医の役割は大きい」と 上條さん。国は今月から、救命救急センターで精神保健指定医が自殺未遂者の診療に当たった場合に診療報酬を認め、精神科医の関与を促す方策を取り始めた。 (佐藤光展、高橋圭史)

2008年4月18日 読売新聞)

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