2008年4月19日 -- 糖尿病 --

なくそう・減らそう糖尿病

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インスリン治療の現在 便利なポンプ式、普及へ

 ◇今月、診療報酬改定--患者の負担軽減

 糖尿病患者が自ら行うインスリン治療は、頻繁に実施する手間や針の痛みなど日常生活に大きな負担がある。それらを解消する治療法で、カテーテルを装着してインスリンを注入する「インスリンポンプ」の診療報酬点数が今年度から従来の1・5倍に改定された。日本では米国などに比べて普及が遅れていたが、この改定により利用者が増えそうだ。一方、大きな期待を受けて登場した吸入式のインスリン製剤は昨年、国内外の製薬会社が相次いで撤退を表明した。インスリン治療の現状を紹介する。【関東晋慈】

 ◇いつでもどこでも注入 合併症予防にも期待

 ■煩わしさ解消

 山梨県南アルプス市に住む40代のピアノ講師の女性は4年半前、意識不明状態に陥って病院に運ばれ、劇症1型糖尿病と診断された。約半年間、ペン型インスリン注射器を使った後、インスリンポンプに切り替えた。「1日4回、食事の度にインスリンの吸収が良い場所を探して注射することは大変だった。特に外出時はトイレに立たなければならず、気が引けた」と話す。

 インスリンポンプ使用後はそうした煩わしさがなくなった。最近、事故の影響で電車内に1時間近く閉じこめられたことがあった。食後でインスリン治療が必要だったが、腰に携帯していたインスリンポンプのボタンを押し、そっとインスリンを追加注入した。「インスリンポンプに切り替えて良かったと思った瞬間だった」と振り返る。

 ■血糖管理も簡単

 この女性が使うインスリンポンプは、1980年代に東京都内の病院で初めて導入された。携帯電話ほどの大きさで、ベルトに掛けたケースに入れるなどして持ち運ぶ。常に装着してカテーテルを皮下組織に入れ、留置させてインスリンを注入する。

 当時治療を手がけた小林哲郎・山梨大教授(糖尿病学)によると、インスリンポンプは通常体内で分泌されている程度の基礎インスリンが分泌される。インスリンの1回分の注入量は利用者の血糖値の変化に応じて自分で決め、ボタンを押して注入する。食事前など必要な時は多く投与するといったように、調整が容易だというメリットがある。

 風呂に入る時以外は常に装着でき、特に夜間にインスリンを投与できることも利用者に歓迎されている。体の調子が良くなるという感想が多く出ている。体力が向上することにより、糖尿病の合併症を起こすリスクが減少するという。

 ■高い費用が難点

 難点は2~3日に一度、不純物が詰まるためチューブを交換しなければならないことと、注射療法に比べて費用が高いことだ。

 米国では学会や保険会社が使用を認め、ポンプの利用者は約30万人に達しているが、日本では約2000人で、米国の1%未満にとどまっている。

 小林教授は「国内で普及しない主な原因は、インスリンポンプ療法の診療報酬にある。特定保険医療材料費でポンプの点数は低く、ポンプ専用の輸液セットなどが認められていない」と指摘する。

 コストは1台で約50万円かかり、患者にはレンタルされるものの、負担が注射療法より月額で数千円高くなる。「医療機関の利益はなく、持ち出しでやっているのが現状」(小林教授)だという。

 今年度からポンプの点数は1000点から1500点に改定されたことから、患者負担は軽減される。小林教授は「この治療法が普及すると、多くの糖尿病患者の合併症の発症予防につながる。さらに医療費の抑制にもつながることが期待できる」と話している。

 ◇コスト高く微調整にも難、吸入式は各社開発断念

 インスリンを口から吸入するだけで注射に代わる効果があるという期待のもと、吸入式インスリン製剤が登場した。06年に欧州委員会と米国で相次いで使用が認可され、日本でも製薬会社が臨床試験に取り組んでいた。しかし、国内メーカーは昨年、相次いで開発から撤退した。

 開発メーカーの一つだったファイザー(東京都渋谷区)によると、器具が大きい▽インスリン量を微調整できない▽経済的に高い--などの理由から、「患者に受け入れられなかった」という。

 吸入式インスリン製剤は、凍結乾燥したインスリンの粉末を、微粒子にして吸入できるようにしている。肺胞に入ったインスリン微粒子が血中に移行する。手軽である半面、体内で効果的に薬が働く「生体内利用率」は注射器などの約1割で、コストは10倍になってしまう難点がある。

 ファイザー社開発担当の谷地泰則・糖尿病・内分泌疾患領域部長は「吸入式インスリン製剤のコストが他の療法と同じになれば使われると思っている。新たな治療法の開発はあり得る」と話している。

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毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊

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