五月病:そろそろ? 環境変化で心身に変調 時期早くなる傾向
研修を受ける新入社員。生活が激変しストレス過多になりやすい時期なので、休日はしっかり自分の時間を作るなどの工夫も必要だ=東京都千代田区で
就職や大学入学直後に心配される、いわゆる「五月病」。転職者も含め、急激な環境の変化などから心身に不調を来すことも少なくない。重症化して退職せざるを得ないケースもあり、周囲の配慮や、必要に応じて適切な治療も必要だ。【大場あい】
「新入社員が心身の不調を来す時期が早くなり、入社直後に出社できなくなる人もいる」。働く人のメンタルヘルスに詳しい神田東クリニック(東京都千代田区)の島悟院長はそう語る。
島院長によると、ある新卒の会社員は入社式当日の午後から体調を崩して早退し、2日目に同クリニックを受診した。結局、体調が回復せず、仕事をする前に休職した。入社式前日に「辞めたい」と会社に電話をしてきたケースもあるという。
五月病は、うつ状態など、新しい環境に適応するときの心身のトラブルを指すことが多い。適応の過程で、(1)身体(微熱、頭痛、じんましん、食欲不振など)(2)心(いらいら、不安、落ち込みなど)(3)行動(口数が少なくなる、過食、酒やたばこが増えるなど)--の三つの変化がある。
身体の変化は風邪や花粉症に似ているものが多く、身体症状が出ても無理をしてしまいがちだという。医学的には、症状の程度、期間によって、「適応障害」「うつ病」と診断されることもある。
島院長は「就職できた安心感や、少し職場や仕事に慣れて緊張が解けたことなどを背景に無気力になるという、かつての『五月病』のイメージとは違う。環境の変化自体に耐えられない人が多くなっている」と話す。
自分の気持ちや不調を周囲に伝えられず、ある日突然出社できなくなる人も多く、上司や先輩、家族が前兆を見つけるのが難しい。転職した人の場合、社会人経験はあっても新しい職場の文化や仕事のやり方になじめず、悩みを抱えるケースも増えてきたという。
一方、大学生の場合はどうか。下山晴彦・東京大教授(臨床心理学)によると、最近は入学したことだけで安心し、五月病になるというタイプの人は少ない。入学直後よりも自分で研究テーマを決める時期などに、心の健康に問題が生じやすくなってきた。
講義や研究室を選ぶ時などに自分で選択、行動できずに自信をなくし、うつ状態になる場合もある。失敗した自分を認められずにできないことを避けるようになり、卒業、就職できない深刻なケースもあるという。
◇頑張りすぎ、要注意
いわゆる五月病がきっかけで倦怠(けんたい)感、不眠などが続くと、集中力が低下する。決められた仕事や勉強を終えるために睡眠時間を削らざるを得ず、さらに体調が悪化することが懸念される。
端詰勝敬・東邦大講師(心療内科)は「五月病になりやすいのはまじめで、頑張りすぎてしまう人が多い。新入社員は疲れて当然と思い込まず、周囲の人が『十分睡眠が取れているか』などと声をかけ、悪循環を断ち切ることが大切だ」と話す。本人も「いいところを見せよう」と力まずに、自分の状態を上司や同僚、家族に伝えることも必要だ。
気になる症状がなかなか改善しない場合は、まず内科やかかりつけ医を受診する。他に疑われる病気がないかどうかを調べ、必要があれば心療内科や精神科を紹介してもらう。うつ状態の自己チェック表などを活用し、受診すべきかどうかの参考にすることもできる。
端詰講師によると、医療機関でうつ状態やうつ病と診断された場合、まず必要なのは十分な休養だ。できれば、残業を避けるだけでなく、仕事や学校を休むことが望ましいという。医療機関の治療は抗うつ剤などを処方し、カウンセリングなどを実施する。
家族や友人の配慮も早期改善のポイントになる。島院長は「変化に気づいたときは言葉によるコミュニケーションだけでなく、『あなたのことを考えているよ』というような周囲の雰囲気作りが大切だ」と話す。家庭の場合、家族が最初から言葉で「何かあったの」と問い詰めるより、「食事に本人の好きな食べ物を加えるなど、さりげない心遣いが望ましい」という。
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■うつ状態自己チェック表(東邦大式抑うつ尺度)
各質問に対し、「いいえ」「ときどき」「しばしば」「常に」の四つの選択肢の中から最も近いものを一つ選んでください。
(1)体がだるく疲れやすいですか
(2)騒音が気になりますか
(3)最近気が沈んだり気が重くなることがありますか
(4)音楽を聴いて楽しいですか
(5)朝のうち特に無気力ですか
(6)議論に熱中できますか
(7)首すじや肩がこって仕方がないですか
(8)頭痛持ちですか
(9)眠れないで朝早く目覚めることがありますか
(10)事故やけがをしやすいですか
(11)食事が進まず味がないですか
(12)テレビを見て楽しいですか
(13)息が詰まって胸が苦しくなることがありますか
(14)のどの奥に物がつかえている感じがしますか
(15)自分の人生がつまらなく感じますか
(16)仕事の能率が上がらず、何をするのもおっくうですか
(17)以前にも、現在と似た症状がありましたか
(18)本来は仕事熱心で、きちょうめんですか
●集計
「いいえ」0点、「ときどき」1点、「しばしば」2点、「常に」3点として採点。(2)(4)(6)(8)(10)(12)を除く12問分の点数を合計してください。
●判定
10点以下:基本的に問題ありません
11~15点:うつと健康の境界線上にいる可能性があります
16点以上:軽症うつの可能性があります
毎日新聞 2008年4月11日 東京朝刊


