閉塞性動脈硬化症
動くと足が痛み、重症化すると壊死も。
◆閉塞性動脈硬化症 動くと足が痛み、重症化すると壊死も。
◇歩いて血行改善 足の血管詰まり酸欠状態に
◇症状により投薬や手術も
「じっとしているとなんともないのに、動くと痛くて痛くて」
群馬県高崎市の自営業の男性(75)は3年ほど前から、歩くと足が痛むようになった。25年来、糖尿病を患っており、主治医に「足の血管が詰まっている」と説明され、専門医を紹介された。
先月7日、カテーテル(細い管)を使って右の太ももの動脈を広げる治療を受けた。院内で1週間程度リハビリし、退院できた。「治療後は足が軽くなった感じで、普通に歩けるようになった」と喜ぶ。
閉塞(へいそく)性動脈硬化症は、足の血管(動脈)にコレステロールなどが付着して狭くなり、血管がふさがれてしまう病気だ。65歳以上の高齢者の5%程度がかかっているとされる。心臓で動脈硬化が起こって冠動脈が詰まると心筋梗塞(こうそく)、脳の血管が詰まるのが脳梗塞。これと同じメカニズムのため、「足梗塞」と例えられることもある。
■見逃されやすい
足の血管が詰まると、最初は足の冷えやしびれが起きるが、感じない人もいる。閉塞性動脈硬化症の特徴は男性のように、「歩くと足が痛くなり、休むと痛みがなくなる」ことだ。歩くと足の筋肉に通常より多くの酸素が必要になるが、足の血管が詰まると酸素が十分に届かないために痛みが起きるという。
ふくらはぎが痛む場合が多いため、筋肉などの病気と思われがちだ。北関東循環器病院(群馬県渋川市)の熊倉久夫内科部長は「整形外科を3、4カ所回って来る人もいる。見逃されやすい病気だ」と話す。
紛らわしい病気に、背骨の脊柱管(せきちゅうかん)が加齢などで狭くなって神経が圧迫される「脊柱管狭窄きょうさく)症」がある。やはり歩くと足が痛むが、背筋を伸ばすと痛みが増したり、姿勢を前かがみにすると楽になるといった違いがみられるという。
通常、足の血圧は手の血圧より1割程度高いが、この病気の患者は、足の血圧の方が低い傾向にある。両手両足の4カ所の血圧を一度に測定できる機器で調べると分かる。
病気が進むと、動かなくても足が痛む。重症になると、かいようができたり壊死(えし)したりすることもある。靴ずれのような軽い傷でも、血流が悪いために治りにくくなり、感染を起こしやすい。熊倉さんによると、閉塞性動脈硬化症の患者で足を切断する人の割合は約5%で、感染による敗血症で亡くなる人が約3%いる。
■男性、喫煙者に多く
患者の男女比は6対1とされ、男性に多い。喫煙者が多いのも特徴で、同病院のデータでは男性患者の喫煙率は95%にのぼる。患者の平均年齢は約70歳で、心筋梗塞より10歳程度高い。糖尿病にもかかっている患者も3割いる。
熊倉さんは「閉塞性動脈硬化症の人を調べると、6割に脳梗塞の病変がみつかり、心臓の冠動脈が細くなっている人も4割ほどいる。動脈硬化は足だけでなく、全身で起こっている可能性があり、脳や心臓なども診察しないと、命にかかわる」と強調する。
治療の基本は歩くことだ。足の筋肉を使うと血行がよくなり、血管も太くなる。血管が詰まっていても、別の通り道がバイパスのようにできる。症状によっては、血管を広げたり、血液を固まりにくくする薬が処方されることもある。
早く歩行能力を回復したい場合などには、血管にカテーテルを入れて詰まっている部分をバルーンで広げる方法や、広げた部分にステントと呼ばれる金属製の筒を入れて固定する治療法がある。カテーテルが使えないときには、人工血管や自分の静脈から取った血管で、詰まった部分の迂回(うかい)路を作るバイパス手術が行われる。
一方で、在宅療養中の高齢者にも、閉塞性動脈硬化症が見つかるケースが増えているという。浅井皮膚科クリニック(横浜市)の浅井俊弥院長は「ここ数年、訪問看護ステーションから『患者の足に傷がある』と往診を求められることが多くなった」と話す。
同クリニックの場合、かいようが足に見つかった閉塞性動脈硬化症など下肢の末梢(まっしょう)動脈疾患の患者22例の半数は、14カ月以内に亡くなった。浅井さんは「かいようが見つかったときには進行している状態で、在宅では特に予後が悪い。糖尿病や高血圧などリスクの高い人には、定期的に足のチェックをし、早期に見つけることが大切だ」と指摘する。【下桐実雅子】
==============
■閉塞性動脈硬化症の重症度分類(フォンテイン分類)
分類 症状
1 足先に冷感やしびれがある(無症状の人もいる)
2 ある程度の距離を歩くと痛みで歩けなくなるが、休憩すると再び歩ける
3 安静時に足が痛む
4 かいようや壊死が起きる
毎日新聞 2008年4月8日 東京朝刊


