2008年4月30日 -- 医療 --

死因の画像診断

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事故直前 くも膜下出血

病歴などが不明な患者が運ばれてくる救命救急センター(新潟市民病院で)

 昨年、新潟市の新潟市民病院救命救急センターに、軽乗用車を運転中、電柱に正面衝突した60歳代の男性が、救急車で運ばれてきた。

 調べによると、現場の道路にはブレーキをかけた跡がなかった。男性はシートベルトを着用し、エアバッグが開いたものの、ぶつかった衝撃でハンドルは変形していた。男性は到着した時には、すでに心臓も呼吸も止まった状態で、間もなく死亡が確認された。

 右胸に打撲の跡が見られ、両側の肋骨(ろっこつ)が折れていた。正確な死因は解剖をしなければわからないが、犯罪の疑いがなければ、強制力のある司法解剖は行われない。見る限りは「衝突による打撲や内臓損傷が死因ではないか」と思われた。

 ところが、全身をCT(コンピューター断層撮影法)で撮影したところ、驚きの事実がわかった。

 打撲や肋骨骨折が見られた胸の内部には、大量の血液がたまっていた。事故の衝撃で心臓に近い大動脈という太い血管が傷ついて出血したと見られた。一方、頭部の画像にも、外傷は全くないのに、出血が映っていた。何と、くも膜下出血を起こしていたのだ。

 結局この男性は、運転中に、くも膜下出血を起こして意識を失い、そのために交通事故を起こして胸を強く打って大動脈を損傷した、と推測された。ブレーキの跡がなかった理由も説明がつく。

 同病院放射線科の高橋直也さんは、「死後のCT画像を見て意外な死因に驚くことは、決してまれではない」と話す。昨年は238人の心肺停止患者のうち約7割でCTを撮影。全体の4割で死亡原因と考えられる情報が得られた。

 救命救急センターに心肺停止で運ばれる患者には、過去の病歴といった情報はない。このため、死亡診断書にも「死因不詳」としか書けない例が以前は少なくなかった。CTを撮ることで、そういった例は格段に減ったという。

 全国の救命救急センターを対象にした日本救急医学会での調査報告では、回答施設の9割近くが「死後のCT撮影の経験がある」と答えた。

 同病院副センター長の飯沼泰史さんは、「心肺停止患者では残念ながら救命できないケースが多いが、ご遺族のためにもせめて死因を明らかにするため、できる限りのことを尽くすのが務めと思う」と話す。

2008年4月23日 読売新聞

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