摂食障害
拒食患者見てわれに返る
妻が育てている花。以前は「食」以外のことに興味が向かうことが少なかったという
20歳代から摂食障害を患う女性(60)は、夫(66)とともに、2005年から、埼玉社会保険病院(さいたま市)の心療内科を受診した。そこで、偏食が治まり、回復への階段を上るきっかけをつかんだ。
特別な治療を受けたわけではない。それは、同じ摂食障害の女子高生たちの姿を見たことだった。
長年の拒食で栄養不足に陥り、骨がもろくなる
やせ細った同室の女子高生が、病院食をゴミ箱に捨てた後、看護師には「食べた」と申告。消灯後は、減量のため、2時間も病棟内を歩いていた。べッドで腹筋運動をする子もいて、夜中までギシギシ音がした。
「あんなにやせて大丈夫かな」「あれでは治らないだろう」「私もあんな風だったのかな」
女子高生たちの姿を見て、初めて、自分の状態を客観的に振り返った。それから意識も変わった。
以前は買い物に行ってもカロリー計算ばかりしていたが、今は、おいしさを考える。小食とはいえ、偏食はなくなり、ステーキも食べるようになった。一時は28キロに落ちた体重が、37~38キロに戻った。
摂食障害の患者には、肥満への極度の恐怖感や、やせているのに「自分は太りすぎ」と感じるなど、身体に対する認識のゆがみがあると言われる。治療では、そうした認識の偏りに気づかせようと働きかける。
ただ、厚労省研究班の診療指針の作成に携わった国立精神・神経センター国府台病院(千葉県市川市)心療内科の石川俊男さんは「絶対的な治療があるわけではなく、熱心な医師がそれぞれ工夫しているのが現状」と話す。
埼玉社会保険病院心療内科の中本智恵美さんは「治療には何年もかかることも多い。家族に対する支援も必要」と言う。
「治療で頭に電気ショックをされ、やつれた妻の顔
を見た時はやりきれなかった。疑問を感じ、悩んだこともある」と夫は語る。
夫は、同病院で開かれる摂食障害患者の家族会で、他の家族の話を聞き、「みんな苦労しているんだ」と気持ちが少し楽になった。
妻は最近、庭で花を育てる。「食以外に興味を広げるなんて、以前は考えられなかった」と夫。妻も「自分でも、よく(摂食障害から)抜け出せたと思います。彼の優しさのおかげです」と話す。(佐藤光展、高橋圭史)
(次は「医療を変える 開業医」です)
認知行動療法 自分の行動や感情を記録したり、行動範囲などを制限したりする。
家族療法 家族と共に、どういう時にきちんと食事ができるか、などの解決策を探る。
再養育療法 親と子の信頼関係の問題点に着目し、その回復を目指す。
作業・芸術療法 絵や音楽、園芸などを通し、自己表現を豊かにし、対人関係の改善を目指す。
集団療法 患者や家族同士が話し合ったりする。
(「摂食障害の診断と治療ガイドライン2005」より)
2008年2月19日 読売新聞


