2008年2月 5日 -- 医療 --

突発性難聴 はっきりした原因なく突然聞こえなくなる。どんな治療法が…

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 ◆はっきりした原因なく突然聞こえなくなる。どんな治療法があるの。

 ◇ステロイドを内服、注射 発症4カ月で聴力固定、全快は1/3

 ◇時間がたつと回復難しく、早期受診が重要

 ■めまい、耳鳴りも

 愛知県内に住む30代の派遣社員の女性は05年6月、目覚めたときに右耳が聞こえなくなっていることに気づいた。半月前にひどいめまいに襲われたことはあったが、聞こえないのは初めてだった。

 翌日、近所の耳鼻科で突発性難聴と診断された。耳鳴りも激しく、別の病院に入院して治療を受けた。ステロイド剤の点滴を受けても改善せず、転院して鼓膜の奥に直接ステロイドを注射する治療も受けた。1カ月程度で耳鳴りなどは改善したが、聴力は完全には回復しなかった。

 女性は演奏会などで活躍するアマチュアのピアニストで、「今後もピアノが弾けるだろうか」と不安が募った。最初に入院した病院のロビーで好きな音楽が耳に入ったとき、左耳だけだと全く違う曲に聞こえ、さらにショックを受けた。

 今は日常生活に支障はなく、ピアノも演奏しているが、右側から話しかけられると聞き取りづらいことがある。「耳鳴りや左右で聞こえのバランスが悪いことなどもあり、周囲の人が思うよりストレスや落ち込みが激しい。発症後はゆっくり休むことが必要だと思う」と話す。

 ■多くは片側だけ

 突発性難聴は、はっきりした原因がないのに、突然耳が聞こえなくなる病気だ。ほとんどは片側だけ発症し、国の特定疾患(難病)に指定されている。

 喜多村健・東京医科歯科大教授(耳鼻咽喉(いんこう)科)によると、音はもともと空気の振動で、外耳、中耳を通ってきた振動を、内耳の「蝸牛(かぎゅう)」で電気信号に変換し、大脳に伝えることで「音」として認識する。突発性難聴の場合は、この電気信号に変えるシステムに障害が起きていると考えられる。

 ■患者は増加傾向

 厚生労働省研究班の01年の調査によると、全国の患者数は3万5000人と推計される。87年調査時の2倍以上で、年々増加しているとみられる。疫学調査では、糖尿病患者で発症の危険性が高まることは分かっているが、関係は不明だ。

 突発性難聴は、難聴の原因が何もみつからないときに診断される。一般的に難聴の原因には▽けがなどで鼓膜や内耳の一部などに障害が出る▽内耳のウイルス感染(おたふく風邪など)▽中耳炎▽内耳の腫瘍(しゅよう)▽脳梗塞(こうそく)などによる内耳の血流悪化--などがある。脳梗塞、脳腫瘍などが原因かどうかは、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)検査で分かる。

 長期間騒音を聞き続けた場合などに起きる難聴は、両耳が同時に悪化することが多い。コンサート会場などで突然大音響を聞いた後に発症する場合は「音響性外傷」と呼ばれ、音で内耳が損傷したのが原因で、いずれも突発性難聴とは区別される。

 ■確実な方法なし

 原因が分からないため、確実に効果がある治療法はないが、ステロイドの内服薬や点滴、ビタミン剤などが処方されることが多い。最近は、内耳にステロイド剤を直接注入する治療をする医療機関もある。岡本牧人・北里大教授(耳鼻咽喉科)によると、ステロイドは糖尿病を悪化させることもあるため、糖尿病患者に対しては処方が難しい。

 岡本教授は「聴力が完全に回復するのは発症者の3分の1程度」と話す。難聴の程度は発症後4カ月程度で固定し、それ以上は改善しにくい。改善するケースが多いのは、▽発症後1週間以内に治療を開始▽難聴の程度が軽い▽めまいがない▽比較的年齢が若い(小児を除く)--など。「少し様子を見ようとは思わずに、聞こえないことに気づいたらまず耳鼻科を受診してほしい」(岡本教授)という。

 ◇一見正常だが聞き取りに難も--周囲は話し方に配慮を

 ■心身に負担大きく

 患者の多くは片方の聴力は正常で、日常生活に大きな支障はないと思われがちだ。コミュニケーションが滞ることも少なく、周囲の人も患者が難聴であることを忘れてしまうことがある。

 しかし、発症した方の耳に向かって話しかけられると、聞き取れないことがある。片耳では音が出ている位置が把握できず、複数の人が同時に話すと、誰が何を話しているか分からないという問題もある。

 心身への影響は大きく、通院中の患者124人を対象に厚労省研究班が調べたところ、患者のQOL(生活の質)は身体、精神の全項目で、一般的な日本人より低下していた。岡本教授は「聴力が回復しないまま固定した場合は、聞こえる耳の方に来て話すなど配慮が必要だ。耳鳴りが残る人も多いので、生活スタイルを変えてストレスを避けられるよう、周囲の協力が欠かせない」と話す。【大場あい】

毎日新聞 2008年2月5日 東京朝刊

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