声割れ「花粉症かな?」
東京都の自営業、斎藤光敏さん(70)は、2005年の秋、のどががらがらして、声が割れるようになった。二十数年来の花粉症で、毎年春には同じような症状が出る。「季節はずれの花粉症?」とも思ったが、念のため、近くの耳鼻咽喉(いんこう)科を受診。「のどにポリープがあります」と検査入院を勧められた。
仕事があるので、「1か月待ってください」と答えたまま、2か月が過ぎた。のどあめをなめながら仕事をしたが、「エヘン虫に取りつかれたような」(斎藤さん)症状は続いた。同じ病院に行くと今度は「絶対検査入院を!」と強く言われた。喉頭(こうとう)がんと診断がついた。
紹介された東京都三鷹市の杏林大形成外科・頭頸部(とうけいぶ)腫瘍(しゅよう)外科で、准教授の平野浩一さんの診察を受けると、がんは声帯の左側の部分だけにとどまっていることがわかった。
治療の選択肢について説明を受けた。声帯の一部を切り取り、首の皮膚で再建する手術。あるいは、レーザーで削る方法もある。いずれも、治療後に話はできるが、声が変わる。
一方、初期の喉頭がんの放射線治療は、照射範囲が狭いので副作用は比較的少ない。治療中に飲み込むのがつらくなる人もいるが、ほとんどの場合、治療後に症状は消え、声も戻る。
放射線治療は通院ででき、再発してもすぐ見つかれば声帯の一部を切る手術で声を残せる。そう聞いて、仕事を休まないで済む放射線治療を選んだ。31回照射を受け、何の副作用もなく、がんは消えた。
喉頭は「のどぼとけ」の位置にあり、中に声帯がある。喉頭がんは、斎藤さんのように声帯にできるものが6割以上を占める。残る約3割は声帯の上にできる「声門上がん」で、声帯の下にできる「声門下がん」は喉頭がん全体の1~2%と頻度は少ない。いずれもがんが小さければ喉頭を部分的に切る手術か放射線治療が行われる。
喉頭がんが進行し、喉頭を取り除く手術を行うと、声を失い、鎖骨の間に開けた穴から呼吸をすることになる。訓練すれば食道を使って話すことはできるが、生活は大きく変わる。「のどのがんの中では最も初期に自覚症状が出やすいが、進行してから来る人もいる」と平野さん。
のどにできる喉頭、咽頭(いんとう)がんや、食道がんは中高年男性に多く、併発することもある。斎藤さんも喉頭がんの治療中、ごく早期の食道がんが見つかった。内視鏡で切り取るだけで済み、斎藤さんは「喉頭がんが見つかったおかげ」と振り返る。
<喉頭がんの症状> 声がかすれたり、がらがら声になったりする。周囲からの指摘で気づくこともある。声に変化が起きず、のどのいつも同じ場所に異物感があったり、飲み込む時に痛みを感じたりしてわかることもある。進行するとタンに血が混じったり、呼吸が苦しくなったりするなどの症状が出る。
参考:読売新聞 2008年1月23日


