メタボリックシンドローム 特定健診、積極的活用を(その3)
--予防法としては
まず最初に生活習慣の改善を行うことに勝るものはありません。米国の研究でも、生活習慣を改善することによって糖尿病の発症頻度が減ったという報告があります。そういう意味でも、今回の保健指導の方向性は正しいと思いますし、個人、個人に対する保健師さんなどの活動も大変重要だと思います。
しかし、生活習慣だけでは、どうにも改善できない人もいます。そういうときには、その人のリスクの高さを考えながら薬剤を使って治療することになり、その有用性も示されてきました。例えば、中性脂肪を下げるフィブラート系薬剤を使った海外の臨床試験「FIELD」では心筋梗塞や脳卒中がなかった2型糖尿病患者での心筋梗塞などの心臓病の発生が減少したことが報告されています。同時に、腎症・網膜症といった糖尿病の合併症も減少していました。つまり、フィブラート系薬剤は中性脂肪の代謝分解を活発にし、肝臓で善玉のHDLが作られるのを助ける働きがあり、前述のリポタンパクなどの代謝の流れを改善して糖尿病患者の動脈硬化を防げることがわかってきたのです。
ただし、生活習慣を見直さずに薬剤だけに頼ろうというのは虫のよい話で、生活習慣改善の努力をしながら薬剤を使うことで治療の効果も高まります。
■リスク軽減へ官民一体の運動必要
--ところで生活習慣の現状は
日本人の食生活が大きく変わって、脂肪の摂取量も急増していることは事実です。沖縄がいい例で、日本でも徐々に起きつつある肥満状況の予測ができます。現在、沖縄の肥満率は男性47%、女性43%(40歳以上でBMI25以上)で、全国平均(男性31%、女性25%)を大きく超え、米国の60%(18歳以上でBMI25以上)との中間に位置しています。沖縄では1980年以降、肥満が増加し、2000年には男性の平均寿命が全国26位まで急落しました。糖尿病や脂質異常症のほかに心筋梗塞の増加も指摘されています。沖縄のカロリー摂取量は全国平均よりやや低い傾向にありますが、米国流の食生活の普及が早かったためにカロリー摂取量の中でも脂肪摂取の割合が高いことと運動不足が肥満を増加させているのではないかと考えられています。
最近は街中でも太っている人たちをよく見かけるようになりました。将来、全国的にも同じようなことが起こり得る兆候が出始めているわけです。
--個別対応のほかに何かいい方法があるか
基本的には、一度身についてしまった生活習慣というのはそう簡単に変えられないものなので、子供のころから、よい「食習慣」などを養っていかなければならないと思います。それからもう一つ、国全体で取り組まなければならないと思いますが、フードマーケティングです。米国では、1980年代からフードマーケティングなど国民運動的に官民一致で国民全体のコレステロールを下げることに取り組み、その結果心筋梗塞などの死亡率を約3分の1にまで下げた実績があります。わが国でも、そういう形で取り組むことが、すごく大きなインパクトになるだろうと思うのです。
--今度始まる特定健診・保健指導は病人を増やすだけだという議論がありますが
今回の保健指導というのは、受診者の中からリスクのある人たちをみつけだし、病気の予備群の段階から把握して病気にしない作戦です。だから、すでに薬剤を服用している人は対象から外れているわけですし、一定の基準を作ってそれ以上は病気にしましょうというものでもありません。あくまでも病気の予備群を見つけようという考え方なのです。ハイリスクの人を減らすことにより医療費の削減を狙っていますが、保健指導の結果を問われることもあって、保健機関・関係者の現場では、これまでになく予防をしなければという熱い機運が高まっているようですね。
これまでの健康診断などで生活習慣病を指摘されながら放置していた人が受診することで、ハイリスクの人を確実に保健指導や治療に向かわせることができるようになるでしょう。
また、医師の立場としても生活習慣病に対する意識が高まって生活指導や治療がやりやすくなると期待しています。
軽い生活習慣病だからといって放置していたために働き盛りの人が急に心筋梗塞になってしまうのは、社会にとっても、家族にとっても大きな損失です。ぜひ特定健診を活用してください。
参考:産経ニュース


